全国9地域・24大学が参加する大学サッカーの夏の全国大会、『202年度 第46回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』が8月18日に開幕した。大会前には九州第3代表の日本文理大学が出場を辞退するなど、未だ新型コロナウイルス感染症の影響のある中での実施となったが、出場大学は『夏の大学日本一』を目指して熱戦を繰り広げた。
ともに総理大臣杯の出場は久しぶりとなる、強豪校同士の対戦。試合前は関東第5代表ながらJクラブ内定者4名を擁する桐蔭横浜大学が有利かと思われたが、蓋を開ければ常葉大学が多数のチャンスを作る展開となった。しかし、両チームゴールを決めきれないまま90分が終了。スコアレスのまま、試合は延長戦に突入。10分ハーフの延長戦でもスコアは動かず、勝負はペナルティーキック戦に委ねられた。
ひとり目のキッカーを成功させた桐蔭大に対し、常葉大は桐蔭大のGK、1番・北村 海 チディに1本目のキックを止められてしまう。だが、常葉大も17番・中島佳太郎が、桐蔭大の3人目のキックをストップしてイーブンに。4人目は両チーム外すなど決着がつかず、ペナルティーキック戦はサドンデスに入った。ともに6人目、7人目が成功し、迎えた8人目。桐蔭大の14番・白輪地敬大のキックを、常葉大の17番・中島がストップ。その後、常葉大の13番・岸孝宗郎がゴール右に決めて勝負有り。最後まで粘り強く戦い抜いた常葉大が、ペナルティーキック戦に勝利して2回戦に駒を進めた。
日本文理大学の出場辞退により、急遽出場が決まった九州共立大学。準備期間不足が心配されたが、序盤は九共大が勢いのあるプレーを見せた。だが北海道教育大学岩見沢校も粘り強く守り、スコアレスで前半を終えた。
試合が動いたのは後半に入ってすぐだった。49分、岩教大は鮮やかなパスワークで中盤から攻め上がると、10番・河合悠人がシュートと見せかけてマイナスのパス。上がってきた33番・黒崎皓嗣が受けるとそのままゴールに突き刺し、岩教大が先制する。しかし九共大も55分、ゆっくりとしたボール回しで岩教大の守備を崩し、最後は25番・川原陸登が左サイドからのボールを収め、コントロールショットを決めて同点に。この後は、前半の展開が嘘のように激しいゴールの奪い合いとなった。61分、CKからチャンスを作った岩教大は、GKが弾いたボールを拾った31番・藤原進士郎が、鮮やかなミドルシュートを決めて再びリードを奪う。だがその3分後の64分、九共大が反撃に出る。11番・樋渡鯉太郎が左サイドからペナルティエリアに侵入。すかさず出したパスを、25番・川原がこの日2点目となるゴールを決めて、すぐさま追いつく。九共大はさらに72分、右サイドを丁寧に攻略すると9番・福田凌生の上げたクロスに26番・椛島大暉が頭で合わせて3点目。九共大がついに逆転に成功する。リードを守りきりたい九共大だったが、80分に岩教大の19番・石山風吹がペナルティエリアに侵入したところを倒してしまい、ペナルティーキックを献上。岩教大は10番・河合がこれを冷静に沈め、スコアは3-3に。その後は両チーム追加点を挙げられず、試合は延長線に突入した。
延長戦では、両チーム決定機を得ながらも決めきれず決着はペナルティーキック戦に。九共大の3人目のキッカーは、この日2ゴールを挙げた25番・川原。しかしこれを岩教大GK、1番・鴨川寛也がファインセーブで弾く。九共大GK、1番・勝木翔也も続く4人目のキックを弾くが、ボールはそのままゴールの中へ。残るキックをすべて決めた岩教大がペナルティーキック戦を制して2回戦進出を決めた。
ともに大学名に福祉を掲げる“福祉大ダービー”は、思わぬ大差がつく結果となった。序盤から決定機を逃さなかったのは、北信越の雄・新潟医療福祉大学。16分、11番・オナイウ情滋が右サイドからペナルティエリア内にカットイン。出したパスに10番・小森飛絢が反応。ボールを納めると体を反転してゴールを決める。さらに2分後の18分、新医大は相手ボールを奪うと、先制点を挙げた10番・小森が前線までボールを運ぶ。そのままペナルティエリア外からミドルシュートを突き刺し、あっという間にリードを2点差に広げた。だが関西福祉大も27分、相手のパスミスから19番・鄭健司がボールを奪取。10番・奥村仁とのワンツーでゴール前に抜け出すと、そのままゴールに押し込んで1点を返す。だが、この1点も新医大の勢いを止めることはできなかった。新医大はコーナーキックの流れから32分に9番・田中翔太、41分には4番・秋元琉星がそれぞれゴールを挙げてスコアを4-1に。さらに43分、11番・オナイウ、10番・小森とつないで最後は9番・田中がこの試合2点目となるゴールを決めて関福大をつきはなす。前半だけで5点を奪った新医大が、5-1で試合を折り返した。
後半は4点を追う関福大が積極的に攻撃を仕掛けるが、大量リードの新医大が危なげない守備で関福大に追加点を許さない。結局、後半はどちらもゴールを決めることなく5-1で試合終了。新医大が“福祉大ダービー”を制した。
中国と四国、それぞれ第1代表としての誇りを賭けた一戦は、慎重な立ち上がりから拮抗した展開となった。その均衡を切り崩したのは福山大。20分、9番・村尾竜汰、7番・吉田新大らが連動してボールをつなぎ、最後は10番・岡田大輝がヘディングシュートを叩き込んで先制点を挙げる。四国学院大もチャンスを作ったものの、決めきることができず、0-1の福山大リードで前半は終了。
後半は両チーム一進一退の攻防戦となった。60分過ぎには四学大が選手2人を一度に替えるなどして前線の活性化を図るが、得点には結びつかない。一方の福山大も追加点を挙げることはできず、試合は0-1のまま終了。福山大が前半に挙げた1点を守りきって勝利を収めた。
関西第2代表の大阪学院大学が、スコア・シュートともに北海道の雄・札幌大学を圧倒した。序盤から優勢に試合を進めていた大院大は13分、中央から攻撃を仕掛け、最後はペナルティエリアないでボールを受けた12番・閑田隼人が決めて先制。27分には、12番・閑田のシュートのこぼれ球を拾った8番・澤崎凌大が、ゴール左隅に蹴り込んで追加点を挙げて2-0に。
大院大は後半開始早々の47分にも、20番・渡健大がフリーキックの流れからスーパーロングシュートを決めて3点目をマーク。札幌大を突き放した。リードを3点差に広げた大院大は、その後3選手を一気に入れ替えるも安定した試合運びで札幌大の攻撃を寄せ付けない。札幌大は途中出場の11番・髙橋歩武らがチャンスを作るが得点には結び付けられない。すると終盤、大院大が連続得点で試合を畳み掛ける。85分、26番・四宮悠成がペナルティエリア内で相手DFをかわしながら右足を振り抜き4点目。89分に17番・川北笑、90+1分には11番・北田統士が立て続けにゴールを挙げて勝負あり。大量6得点を挙げた大院大が初戦突破を果たした。
本大会出場チームの中で唯一の2部リーグ所属、関東学院大学が粘り強い戦いを見せた。先にチャンスをつかんだのは九州産業大学。序盤の8分にスローインからゴール前に迫ると、相手GKをかわして5番・鷹巣直希が先制点を叩き込む。しかし関東大も徐々に主導権を握り、30分過ぎには9番・村上悠緋が倒されてペナルティーキックを獲得。9番・村上自身が蹴ったキックは九産大GK、21番・小窪太斗に止められたものの、弾いたボールがそのままゴールへ。関東大が同点に追いつき、前半は終了した。
後半に入り、先にスコアを動かしたのは関東大。52分、15番・橋本丈からのパスを受け、16番・坂本順平が放ったシュートはポストを直撃。しかし、その返りを16番・坂本自身が押し込んで追加点。関東大が2点目を挙げ、逆転に成功する。対する九産大も次第に攻撃のギアを上げ、59分には7番・戸田海人が関東大にプレスをかけてボールを奪取。13番・小浜耀人を経て、最後は9番・ベジョンミンが強烈なシュートを突き刺し、今度は九産大が関東大に追いついた。このシーソーゲームに決着がついたのは74分。相手DFのクリアミスを拾った関東大の33番・上田英智が、そのまま豪快にシュートを叩き込んで3点目。これが決勝点となり、関東大が3-2で接戦を制した。
地元・東北地区代表の仙台大学と前年度チャンピオン・法政大学。1回戦注目の一戦は、しかし両チームとも攻めあぐねる、苦しい展開となった。前後半を通してボールを保持していたのは法政大。しかし、仙台大の堅い守備の前になかなか決定機を作ることができない。
後半に入っても大きな変化はなく、どちらもゴールが遠い。そんな中、仙台大は両サイドを使って攻撃を仕掛ける回数を増やし、数少ないチャンスを窺う。その狙いが的中したのは、終了間際の88分、仙台大は9番・佐々木翔が右サイドの深い位置から前線にボールを入れる。これを受けた29番・吉田騎はドリブルで独走。そのまま前線に駆け上がると、ペナルティエリアのすぐ外から右足を振り抜き、ついにゴールネットを揺らす。9番・佐々木、29番・吉田ともに途中出場。仙台大・西洋祐監督の采配がずばり的中し、仙台大が貴重な先制点を挙げる。一瞬の隙を突かれた法大は同点に追いつくべく猛攻を仕掛けるが、仙台大もゴールを死守。残り時間を守りきり、1-0のままタイムアップ。地元・仙台大が王者・法大を破る大健闘を見せた。前年度優勝校、法大はまさかの初戦敗退。連覇を叶えることはできなかった。
古豪同士の対決は、スコア以上の差がつく結果となった。立ち上がりこそ高知大学がゴールを狙うシーンがあったものの、次第に順天堂大学が試合を圧倒する展開に。それでもなかなかゴールを決められず、ようやくスコアが動いたのは37分。左サイドを10番・塩浜遼が崩してチャンスを作り、11番・小林里駆がシュート。これは相手選手に防がれるものの、クリアボールを拾った33番・栗原諒が蹴り込んで順大が先制する。一方の高知大はシュート0と、反撃の糸口をつかめないまま前半を終えた。
後半も順大が試合の主導権を握り、高知大ゴールを脅かす。65分には相手のパスミスを拾った10番・塩浜が、ペナルティエリア左外から狙いすましたシュートを決めて追加点。対する高知大も8番・池内斗磨を中心に順大ゴールを狙うが、決定的な局面を作るまでにはいたらない。順大はその後も危なげない試合運びでゲームを支配。85分にはフリーキックの流れの中から、10番・塩浜がこの試合2点目を決めて勝負あり。試合は3-0で終了し、順大が完勝を収めた。
1回戦の結果、北海道1チーム、関東2チーム、関西1チーム、九州2チームが敗退。四国は代表2チームとも初戦敗退となった。また前年度チャンピオンの法政大学が初戦で敗退するなど、今大会も1回戦から波乱含みの展開となっている。2回戦からはシードチームが登場。1回戦を勝ち抜いた8チームと熱戦を繰り広げる。