2大会ぶり6度目の優勝を狙うユニバーシアード男子代表の初戦が、2日に行われました。対戦相手のイランは、2001年以来となる大会出場です。そのときは、巻誠一郎選手(駒澤大→熊本)の2得点を含む3-1で勝利しましたが、今回は14年ぶりとあってまったく未知の相手。2001年・北京大会では対戦したときは、それだけに、神川明彦監督も大会前から特に警戒していた相手でした。
試合は序盤から日本が圧倒的に主導権を握る展開となりました。しかし、日本は極端に守備を固めてくるイランに対し、どうしてもゴールを決めることができません。16分には、小林成豪選手が倒されてFKのチャンスに。田上大地選手が強烈なFKを放ち、決まったかと思われましが、これをイランのGKがファインセーブ。この後も、30分に左サイドバック・高橋諒選手がボールを奪ってゴール前へ。34分には奥山政幸選手、松下佳貴選手とつないで小林選手のミドルシュートはわずかに枠の外。38分の澤上竜二選手のミドルシュートもGKがストップ。ほかにも何度となくいいクロスがゴール前に入りますが、いずれもイランGKの好守に阻まれてしまいます。
攻めきれずにスコアレスのまま後半を迎えた日本ですが、後半開始早々の15秒過ぎ、思わぬ形で試合が動きます。立ち上がりで集中力を欠いた日本の右サイドをついて、イランの選手が先制点をマーク。日本は、1点のビハインドを負いますが、「失点したことで、逆に日本本来の守備の形を取り戻せた」と神川明彦監督。前半からの絶え間ない攻撃と、粘り強く足を止めないプレーがボディブローのようにイランを襲います。イランに足のつる選手が出始めると、神川監督は勝負に出ました。66分、長谷川竜也選手に代えて、ここぞというときの決定力に定評のある和泉竜司選手を投入。和泉選手は交代早々、その期待に応えます。68分、ゴール前にフリーであがり、右サイドバック・室屋成選手のクロスに頭で合わせてゴール。「前半は(相手の)クロスへの対応がすごかったけれど、自分が入った時はもう疲弊していたから、点を取れるところに入れればチャンスだと思っていた」(和泉選手)。和泉選手にとってはファーストプレーとなる狙いどおりの得点で、試合は振り出しに戻ります。
さらに78分には、八久保選手に代えて呉屋大翔選手を投入。呉屋選手を1トップに、澤上選手を右サイドに配置するとこの采配がピタリと的中。それまでトップで散々相手GKの好守に苦しめられていた澤上選手ですが、「サイドに回ったほうが、前向きにボールを持てた」と、左サイドバック・高橋諒選手からのボールをキープすると「クロスへの対応が悪く、マークも外れていたので決めるだけ」というシュートをゴールに叩きこんで2点目をマーク。ついに逆転に成功します。
日本は86分、小林選手を下げ、湯澤聖人選手を入れて守備を固めるとそのまま逃げ切って勝利。守備的な相手に対して攻めあぐねて失点するという、ユニバーシアード大会で陥りがちな“負けパターン”となりましたが、失点後に立て直し見事な逆転で初戦を初勝利で飾りました。
第2戦は、7月5日の11時キックオフ。対戦相手は、日本と同じく初戦に勝利したブラジル代表になります。16時半キックオフだった初戦と違い、暑さの中での消耗も懸念されますが、きっちりと勝ってグループリーグ突破を決めたいところです。
【監督・選手コメント】
■神川明彦監督
あそこまで引かれるとは予想していなかったので、選手たちはやりにくかったと思います。相手GKも非常によかった。前半の田上選手のFKが弾かれたのも驚きでした。
ただ、ああした場面でクロスやラストプレーが精度を欠き、決めきれなかったことで、後半開始直後の失点を招いたのだと思います。それでも、初戦の難しい試合を、自分たちの力で逆転して勝ったということは大きいですし、この勝利でまたチームが団結したと思っています。
今日の初戦はある意味、決勝戦よりも重要だと思っていました。その試合に勝てたことは本当に大きい。前半は相手に引かれたことでどこかちぐはぐになってしまいました。点を取られてから、ようやく本来の形が出せたと思います。
日本の選手は真面目で、自分たちのリズムで試合が展開できないと、イライラしてしまうことが多い。今日の相手は極端だったかもしれませんが、引いて守ってカウンターという戦い方は、この大会ではよくあること。その餌食にならないよう、気をつけたいと思います。
■澤上竜二(大阪体育大・FW・4年)
前半はけっこう攻めていたのですが、後半の立ち上がりに集中力が切れてしまった。ああいうところをもっと締めていかないと、強い相手になったら逆転は難しいと思います。
前半は、かなりGKを見ながらヘディングしていたのですが、相手がうまかった。今日の相手は、背負ったときにガツガツきていたので、(後半に右サイドに回ったほうが前向きにボールを持てて、プレッシャーもあまりなかったです。
ゴールシーンについては、相手のクロスへの対応があまりよくなくて、マークが外れていたので、あとは決めるだけでした。最後に決められてよかったです。
今日はもっと簡単に勝てた試合かもしれませんが、苦しんだ中で勝てたという経験は大きい。本当に勝ててよかったです。
この大会では常に日本が上位の成績を残しているだけに注目度も高いと思います。注目されながら勝つということは難しいと思いますが、そこで勝てれば力になると思うので、しっかり勝ちきりたいです。
■和泉竜司(明治大・MF・4年)
今日は、神川監督に「点を取ってこい」と言われて送り出されましたし、自分の求められているのは、点に絡むことだと思っていました。負けてる状態でしたし、ゴールに直結するプレーでチームに貢献しようと意識していました。ファーストプレーで決められたというのは自分でも自信になりました。
前半からいいクロスは上がっていたし、チャンスになる場面もありました。ただ、前半は相手のクロスへの対応や危機察知能力がよく、正直「すごいな」と思って見ていましたが、自分が交代で入った時には疲弊しているというか、集中力が切れているように見えました。日本が前半から攻撃し続けていたからだと思いますが、自分がフリーだということはピッチに入ってすぐに感じたので、点を取れるポジションに入って、そこにボールがくればチャンスになるとは思っていました。成もいいクロスをあげてくれたし、しっかり決められてよかったです。
今回は頭で決めましたが、いろいろな得点の形をもっているのは自分の強みだと思っています。ヘディングだったり足だったり、泥臭くいったり。どんなゴールでもゴール。そういう部分は常に意識しています。
2点目を取れたこともチームとして大きいし、何より勝ち点3とれたことが大事。1戦1戦、目の前の試合だけに集中して、全員がいい準備をできるよう心がけて、次戦に臨みたいです。
■奥山政幸(早稲田大・MF・4年)
非常に難しいゲームでしたが、まずは勝てたことが大きかったと思います。こうした難しいゲームで勝ち切る力というのが備わってくれば、優勝も狙えると思う。今日は本当に勝てたことが大きいと思います。
ただ、引かれた中でもチャンスはあったので、改めてそこを決めきる力も必要だと思いました。これからの試合でも、イランのように引いてくる相手は予想されるので、そういった部分での修正力をしっかりとつけていきたいと思います。
個人的には、自分が前に行くことで相手が捕まえきれないという部分があったので、しっかり前に絡むことは意識していました。ただもう少し攻撃の時に前に絡めたら、前線でチャンスを作れたと思います。守備についても相手がロングボールを多く入れてくる中で、セカンドボールをもっと回収できていれば、ピンチは少なく済んだと思います。そういったところを改善していきたいです。
■室屋成(明治大・DF・3年)
先制されましたが前半からいい崩しもできていましたし、失点した後もみんなが落ち着いてプレーできました。その中で2点取れたというのは、チームとしていい方向に向いていると思いました。
同点をアシストしたシーンは、八久保(颯)くんが前に抜けて、クロスを上げるスペースが見えたとき、相手のセンターバックの後ろに(和泉)竜司くんが見えました。そこにうまく合わせられてよかったです。
個人的に失点シーンでは少しミスをしてしまったのですが、慌てることなく落ち着いてプレーしたことで、同点のアシストもできたのだと思います。ミスに引きずられることなく、とにかくチームのためにハードワークをしようと思ってプレーした結果だと思います。いいプレーも悪いプレーもあって勉強になったし、大会を通じてもっとパフォーマンスをあげていきたいと思いました。
■試合結果詳細
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