シードの12チームが参戦し、全4会場で16チームが火花を散らした第39回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント。昨年度優勝校の流通経済大学が順当に初戦突破を決めた一方で、関西チャンピオンの関西学院大学は前半に退場者を出しPK戦で辛勝。また九州の雄・福岡大は、昨年度インカレに続いて関東の昨年度リーグチャンピオンの専修大に、こちらもPK戦で勝利しました。今大会唯一の初出場の東洋大は、C大阪内定の澤上竜二擁する大阪体育大に終了間際のロスタイムに追いつかれ、その3分後に再び突き放すという劇的な展開でベスト8に進出。ほかにも、昨年度準優勝校の法政大、関東チャンピオンの明治大がスコアは1-0ながら安定した試合運びで勝利。関西代表の阪南大も、平成国際大に5-0と大差をつけてベスト8入を決めました。筑波大と北陸大の対戦は延長戦まで試合がもつれましたが、延長後半に筑波大が決勝ゴールをあげて初戦を突破しました。
この結果、ベスト8には関西学院大、法政大、福岡大、筑波大、流通経済大、阪南大、東洋大、明治大が残りました。
■高知大学 0−0(PK6-7) 関西学院大学
関西王者、関西学院大が苦しみながらも総理大臣杯の初戦突破を決めました。試合が動いたのは前半も終盤に差し掛かった40分。中盤の福富孝也が2回目の警告を受けて退場となり、関学大は残り50分を10人で戦うこととなりました。
この試合が初戦の関学大に対し、3日前の1回戦でPK戦まで戦っている高知大にとってはまたとない展開。しかし、高知大は攻め込みながらもゴールを決められず、スコアレスドローのまま延長戦に突入。延長戦でも決着がつかず、1回戦同様、勝負はPK戦に委ねられることとなりました。
PK戦では関学大が先攻をとり、両チームともに5人目まで全員が成功し、サドンデスに突入。6人目も双方成功し、関学大は7人目の米原拓もPKを決めます。しかし、高知大の7人目、勝田一秀がシュートを外して高知大の敗退が決定。10人で戦い抜いた関学大が、次の試合へと駒を進めました。
■法政大学 1-0 中京大学
ともに、これが初戦となる東海地区代表・中京大と前年度準優勝校・法政大の対戦は、シュート数14対3と法政大が圧倒的に主導権を握る展開となりました。しかし決定機を決められないまま、両チーム無得点で前半を折り返します。
なんとかゴールを奪いたい法政大は、56分、63分と早いタイミングで立て続けに上田慧亮、高田一輝を投入します。これが功を奏し73分、山田将之のドリブル突破に、高田が走り込んでシュート。これが決勝点となり、法政大が勝利を収めました。
■専修大学 1-1(PK1−3) 福岡大学
ともに低調なスタートとなった前半。ハーフタイムに専修大は柳育隆、野田卓宏の2人を、福岡大は山下敬大を投入し、試合の打開をはかります。
先に動いたのは福岡大でした。78分、瓜生紘大のクロスを収めた薗田卓馬がゴール前にパスを送り、これを野嶽惇也が決めて先制。このまま福岡大が逃げ切るかと思われましたが、アディショナルタイムに入った90分+3分、専修大が終了間際に追いつきます。右サイドバック、柳からのクロスに交代したばかりの大戸岬が頭で合わせてゴール。試合は1-1のまま延長戦でも決着がつかずPK戦へ。PK戦では、専修大の1人目のキッカー・佐野弘樹のシュートを、福岡大GK・永石拓海がストップ。しかし福岡大も、2人目の加部未蘭のシュートもポストを叩いてしまいます。これで1-1となったものの、専修大は3人目の北出雄星が外し、4人目で同点ゴールを決めた大戸のシュートもストップされ、この瞬間、福岡大の準々決勝進出が決まりました。
■筑波大学 3-2 北陸大学
監督がともに筑波大出身で、同年代の先輩後輩。”同門対決”となった筑波大と北陸大の試合は、ゴールを取っては取られるという展開となりました。
先制点は筑波大。17分、DF西村洋平の最終ラインからのロングキックに北川柊斗が反応。北川からのパスを若杉拓哉が押し込んで得点をあげます。しかし、北陸大も24分、FWの小畑賄人が左サイドからドリブル突破でシュートを叩き込んで同点に。北陸大はさらに32分、横山暁之とのコンビネーションプレーから佐藤仁人が追加点をあげ、筑波大からリードを奪います。ですが筑波大もその1分後に、野口航の突破に北川が合わせて再び同点とし、試合を振りだしに戻します。
後半は筑波大が主導権を握る展開となりましたが、両チームともに追加点を奪えず延長戦に突入。再び試合が動いたのは延長後半105分のことでした。交代出場の中野誠也のシュートのこぼれを、西澤健太が押し込んで筑波大が3点目をゲット。これが決勝点となり、筑波大が110分にわたる試合を制しました。
■鹿屋体育大学 1−2 流通経済大学
「相手(鹿屋体育大)は今日が2試合目で、自分たちはこれが初戦。その分、固さがあったのかもしれない」と、試合を振り返ったのは昨年度チャンピオン・流通経済大の田上大地。しかし、前半はそんな”固さ”を感じさせない、幸先のいい立ち上がりとなりました。
序盤から主導権を握った流経大は22分、右サイドバック・湯澤聖人の意表をつくゴールで先制します。「公式戦でのゴールは中学生の時以来で、(ゴール後の)喜び方を忘れてしまった」という湯澤ですが、「これまでの自分であれば、あの場面で突っ込むことはなかったと思う。ただユニバーシアード大会でも点が取れず、自分もこれからプロとしてやっていく中で、チャレンジしなければ成長はないと思った」と、アグレッシブなプレーで貴重な先制点をあげました。
流経大はさらに34分、西谷和希が左サイドからペナルティエリアにカットイン。DFをひきつけると、ゴール前で渡辺直輝にボールを送り、これを渡辺がきっちりと蹴り込んで追加点をあげます。
2点のビハインドを負った鹿体大ですが、前半終了間際にはFW森川和命のシュートがバーを叩くなどの惜しいシーンも。ハーフタイムには、選手2人を代えて反撃を開始します。一方、2点を先制した流経大は59分、チームの心臓ともいえるボランチの古波津辰希が足をつらせて交代。63分にも先制点を決めた湯澤が左足を強くひねって交代するなど、アクシデントが続きます。
そんななか、70分には交代出場の鹿体大・冷岡幸輝がゴール前でファウルを受けてPKを獲得。これを松田天馬がきっちりと決めて、鹿体大が流経大との差を1点に詰めます。鹿体大はその後も福本将也、下坂晃成らの突破を中心に攻撃を仕掛け「ラスト15分は、いつ同点にされてもおかしくなかった」(流経大・中野雄二監督)という展開に。
しかし「昨年も準々決勝で対戦して、球際で勝つという部分をブラさなければいけると思った」(流経大・田上)というディフェンス陣が奮起。鹿体大に追加点を与えることなく2-1で逃げ切り、三連覇に向けての第一歩を踏み出しました。
ヒヤリとするシーンも少なくない初戦となりましたが、流経大・中野監督は「却って、初戦でこういう(反省すべき)試合ができてよかったのかも」とコメント。「それでも、PK以外に失点がなかったところに、今年のチームの強さがあるのかもしれない」と試合を振り返り、「1戦1戦、こうしたゲームを勝ち上がっていくしかない」と、まずは初戦を突破できたことに、胸をなでおろしていました。
■阪南大学 5-0 平成国際大学
初出場時にも阪南大と対戦し、大敗を喫した平成国際大。3年ぶり2回目の出場となる今大会では、その雪辱を晴らすべく臨みましたが、結果は前回同様力の差を見せつけられる形となりました。
阪南大の先制点は開始わずか5分。脇坂泰斗の右CKに、前田央樹が頭で合わせて平国大の出足をくじきます。その後も試合は阪南大が優勢に進め、31分に脇坂が追加点をあげると、その1分後にも脇坂のパスから前田がこの試合2点目となるゴールを決めて3-0に。阪南大が前半だけで3点のリードを奪い、後半を迎えます。
前半、シュートを1本も放つことのできなかった平国大は、ハーフタイムに選手ふたりを交代して起死回生をはかります。しかし69分には、逆に阪南大が八久保颯がゴールをあげて平国大を突き放します。さらにその4分後には、重廣卓也が試合を決定づけるな5点目をマーク。結局5-0という大差をつけて、3年前と同様に阪南大が平国大を下す結果となりました。
■大阪体育大学 1−2 東洋大学
総理大臣杯初出場の東洋大が、したたかな戦いぶりで大阪体育大を下し、初戦突破を決めました。
「相手がボールを奪ったあとに早い攻撃を仕掛けてくることはわかっていたので、全体のバランスを見間違えてカウンターを受けることのないよう、気をつけていた」と試合を振り返ったのは、東洋大・古川毅監督。その言葉どおり、前半の東洋大はやや慎重なゲーム運びで、試合はどちらかといえば大体大ペースに。それでも、エース・澤上竜二へのボールを入れさせないなど決定機を作らせず「ヒヤリとさせるシーンでいえば、うちのほうが多かったはず」(古川監督)。
それが得点の形となって出たのが後半、56分のことでした。右サイドバック・石坂元気がドリブル突破で前線までボールを持ち上がると、ゴール前の遊馬将也へパス。遊馬はこれを後方の小山北斗に流し、小山がシュート。小山のシュートは大体大DFにクリアーされますが、ゴール前に詰めていた田中舟汰郎がこぼれ球を冷静に蹴り込んで先制点をあげます。
ビハインドを負った大体大は57分、末吉塁を左サイドに投入。東洋大の攻撃の起点となっていた、右サイドの石坂、仙頭啓矢のカバーに入ると、その後も平田健人、山田貴仁を立て続けに投入して流れも引き寄せます。
「本当は逃げ切りたかった」(古川監督)という東洋大ですが、後半終盤には連続してセットプレーを与えるなど、流れは完全に大体大に。そしてアディショナルタイムに入った90分+3分、澤上がトラップしたボールをゴール前に入れると、山田がダイビングヘッドで飛び込んでゴール。土壇場で大体大が意地を見せ、同点に追いつきます。
しかし、試合はここでは終わりませんでした。その3分後の90分+6分、東洋大は交代出場の徳市寛人のドリブルが起点となってCKを獲得。一度目のCKはクリアーされますが、2回目の仙頭の右CKに徳市が頭で合わせて追加点。2-1となり、再び東洋大がリードを奪うと、ほどなくしてタイムアップ。アディショナルタイムに2ゴールが入るというまさかの展開となりました。
「中盤のバランサーとして入れた徳市が決めるとは」と、指揮官も驚く決勝点となりましたが「天皇杯予選でも関東1部チームに勝利するなど、今大会参加チームの中では、うちがいちばん勢いがある。選手たちには臆することなく戦ってこいといっていた」と古川監督。準々決勝の対戦相手は、同じ関東代表の1部チームの明治大。関東予選では破れているだけに、本大会でリベンジをはたせるか注目したいところです。
■明治大学 1-0 北海道教育大学岩見沢校
悲願の総理大臣杯初優勝に向けて、関東チャンピオンの明治大がまずは初戦突破。先制点を守りきって、準々決勝へと駒を進めました。
立ち上がりから優勢に試合を進めていた明治大は、32分に瀬川祐輔のパスに富田光が合わせて先制。しかし、その後はなかなか追加点をあげることができません。56分にはエース・和泉竜司を投入して局面の打開をはかるなど、後半だけで岩見沢校の3倍以上のシュートを放ちます。けれど最後まで追加点をあげられず、結局、前半にあげた先制点を守りきって、勝利を収めました。
2回戦の結果、ベスト8に残ったのは関東勢5校、関西勢2校、九州勢1校となりました。準々決勝はJ-GREEN堺・メインフィールドで筑波大学と福岡大学、法政大学と関西学院大学が対戦。ヤンマーフィールド長居では、阪南大学対流通経済大学、明治大学対東洋大学の試合が行われます。はたして、ベスト4に名乗りをあげるのはどの大学となるのか。総理大臣杯も佳境に入り、ますます目が離せない試合が続きます。
■試合結果詳細(関西学生サッカー連盟ホームページ)
2回戦の写真の一部は以下でご覧いただけます(会員登録不要です)。
大阪体育大学対東洋大学
鹿屋体育大学対流通経済大学