第39回全日本大学サッカートーナメントは準決勝を迎え、決勝進出をかけて4チームが対戦。2試合ともに試合終盤、アディショナルタイムに得点が入る劇的な展開となり、その結果、明治大学と関西学院大学が決勝に進出。決勝戦は、どちらが勝っても総理大臣杯初優勝となります。
■筑波大学 1(0-0)2 関西学院大学
関東2部チームからの優勝を目指す筑波大学と、関西勢唯一の生き残りとして意地を見せたい関西学院大学。どちらも負けられない一戦は、関学大が優勢に試合を進めながらもチャンスを決めきれずに、両チーム無得点のまま前半を折り返しました。
後半に入ると、FW呉屋大翔に加え小林成豪、森俊介の両ワイドからの攻撃も激しさを増し、試合は関学大ペースに。「関西(リーグ)なら、こういう試合では早い時間から点が入る。ただ、今日はそううまくいかないだろうとはいっていた」(主将・井筒陸也)という関学大は粘り強く攻撃を仕掛けますが「前も後ろも我慢しきれなかったのかもしれない」と、集中力が切れたのが68分。筑波大の右サイド・西澤健太のクロスに、FWの若杉拓哉が頭で合わせてこぼれたボールを、交代出場の中野誠也が押し込みゴール。準々決勝では2得点をあげる活躍を見せ、「スピードのある中野を、いつ入れるかだと思っていた」という筑波大・小井土正亮監督の采配が的中し、筑波大が先制点をあげます。
しかし、「(この2試合は退場者が出ていたので)11人そろっていたから焦りはなかった。むしろ、準々決勝のように勝っていて相手に押し込まれるよりは、今日のようにビハインドを負って押し込むほうがやりやすい」(井筒)との言葉どおり、その後は関学大が試合を圧倒。筑波大主将・早川とのマッチアップで苦戦していた小林を左サイドから中に入れ、交代出場の池田優真を左に回すなどして、畳み掛けるような攻撃で筑波大ゴールを狙います。76分には、FWの中井栞吏を投入し、前線を呉屋との1トップから2トップに変更。81分、83分、84分と呉屋が立て続けに決定的なシュートを放ちますが、筑波大GK・岩脇力哉の好セーブもあってゴールに結びつきません。
残り時間が5分を切り、筑波大も逃げ切りを意識し始めたその矢先の88分、関学大がついに筑波大のゴールをこじあけます。左サイドを突破した池田がマイナスのパスを送ると、左サイドバックの小川原一輝がこれを受けてゴール前に浮き球をあげます。このボールに右サイドから飛び込んでいったのが森俊介でした。森のヘディングが筑波大ゴールに突き刺さり、土壇場で関学大が同点に追いつきます。
試合はそのまま4分のアディショナルタイムに突入。決勝点が生まれたのは、まさにその4分後のことでした。右サイドの森俊介がファーサイドにクロスを入れ、これを筑波大DFがクリアー。しかしその直後、筑波大DFの足がとまった一瞬を見逃さず、クリアーボールを拾った小林が蹴り込んでゴール。「筑波大にとってイヤなところがつけたと思う」(小林成豪)。この小林のゴールをもって試合は終了。関学大が劇的なゴールで、総理大臣杯初の決勝進出を決めました。
敗れた筑波大の小井土監督は「完全な力負け。たまたまウチが先に1点を取れて、“勝てるかもしれない”と思いましたが、オン・ザ・ボールのスキル、クオリティー、タフさで相手のほうが1枚上手だった。悔しいけれど、選手たちが全力を出し切ったうえでの結果」と、さっぱりとした顔で勝者を称えました。インカレ出場という目標は潰えましたが「リーグ戦では、あれほど押し込まれることはない。まさに、関東2部では味わえない戦いをさせてもらった」と、全国大会でしか積み上げられない経験を重ねたことで「今、選手たちがいちばん1部に昇格しなければダメだと痛感しているはず」とコメント。“名門復活”に向けての手応えを感じている様子でした。
一方、昨年度のインカレに続いて2度目の全国大会決勝進出を決めた関西学院大学。決勝で勝利し、インカレのリベンジをはたすとともに、初優勝で名実ともに“大学日本一”のタイトルを手にしたいところです。インカレ同様、決勝では攻撃の起点となる左サイドの小林成豪が累積警告で出場できませんが、「これまでも(退場などで)人数がそろわない中で、ここまで戦ってきた。決勝は(準決勝で出場停止だったボランチの)徳永裕大ががんばってくれると思う」(井筒)と、チーム一丸で日本一を狙います。
■明治大学 1(PK5-3)1 流通経済大学
昨年、総理大臣杯二連覇とインカレ優勝をはたし、今年は総理杯三連覇とリーグ・全国大会の“三冠”を合言葉にしてきた流通経済大学と、その流経大に2年前の総理杯決勝で苦汁をなめさせられた明治大学。準決勝のもう一戦は、関東勢同士の因縁の対決となりました。
試合は前半の早い時間に動きました。序盤の9分、流経大・塚川孝輝のファウルから明治大がFKをゲット。キッカー・差波優人のキックに、前線まであがっていたDFの鳥海晃司が頭で合わせて明治大が先制点をあげます。その後も、試合はリードを奪った明治大が優勢に進めました。バイタルエリアまでアグレッシブに攻め込む明治大に比べ、流経大はなかなかシュートまで持ち込めません。30分には、さらにアクシデントが流経大を襲います。左サイドバックの石田和希が相手との接触プレーの中で骨折。「連戦で疲れが出ていた」(流経大・中野雄二監督)ため、あえてベンチスタートとしていた1年生の小池裕太を急遽ピッチに送り出すことに。
一方の明治大も、ジリジリとラインを押し上げてチャンスを作ってくる流経大を警戒し「守備のバンラスを考えて」(明治大・栗田大輔監督)、ボランチの差波を42分に下げ、「準々決勝で、柴戸(海)とのコンビがよかった」と伊池翼を投入。これまでにない起用でしたが「あえて勝負にこだわった」と栗田監督。同じ関東のチーム同士、相手のサッカーを知り尽くしているだけに早め早めに動いて対応します。
ビハインドを負った流経大も勝負に出ます。ハーフタイムにジャーメイン良を下げ、中村慶太を投入。西谷和希と中村という突破力のあるふたりを両サイドに置くことで流れを引き寄せます。明治大も押し込まれながらカウンターからチャンスを狙い、両チーム一進一退の攻防を展開。73分に流経大が渡辺直輝に変えて渡邉新太を投入すると、明治大も78分に疲れの見える高橋諒を下げて道渕諒平を投入し、3バックから4バックに変えて守備を固めるなど、“攻”の流経大と“守”の明治大が互いの強みをいかんなく発揮します。
スコアは動かず、試合はアディショナルタイムに突入。「最後の最後まで守りきれると思った」(栗田監督)と、明治大が逃げ切るかと思われましたが流経大も最後まで諦めません。西谷の突破から渡邉がシュートを放ってCKを獲得。すると90分+4分、小池の右CKから、ファーサイドにいたセンターバックの今津佑太が頭で合わせてゴール。終了間際に流経大が劇的なゴールで追い付きます。このゴールの直後にタイムアップの笛が鳴り、試合は延長戦に突入しました。
しかし、延長戦でも両チームチャンスを作りながらもゴールを奪えず、決着はPK戦へと持ち越されました。「昨年も、一昨年も(優勝した年の)準決勝はPK戦で勝ち上がってきた」(中野監督)と、PK戦には絶対の自信をもっていた流経大ですが、3人目の森保圭悟のキックを、明治大GK・服部一輝がストップ。「試合のことを考えたら立花歩夢を出すべきだったかもしれないが、PK戦を見越してPKのうまい森保を入れた」と、中野監督。「その森保が外したことが、この試合の綾だったのかもしれない」。対する明治大はその後も全員がPK成功。5人目のキッカー、小出悠太が決めて試合終了。明治大が2年ぶりの決勝進出をはたしました。
三連覇はなりませんでしたが、「土壇場で追いつけたのはチームが成長した証拠。今日はあきらめない姿勢、チームの粘り強さを見せてくれた」」(中野監督)というように、敗れた流経大も一歩も引かず、見応えのある試合となりました。「三連覇、三冠は逃したけれど、まだリーグ戦とインカレは残っている。今日のような試合を続けることができれば、リーグ戦もとれると思う」と、リーグ戦に向けて切り替えていました。
試合終了間際に追いつかれながらも、2年前の雪辱を果たした明治大。試合前には全員が2年前の決勝、流経大に2-0から逆転負けした試合の映像を改めて確認したといいます。「だから、追いつかれても冷静でいられた。2年前を思い出して動じることなく、“ふりだしに戻っただけだ”と言っていた。間違いなく、あの時の経験が今日に生きた」と栗田監督。
小出、高橋、差波、和泉竜司、藤本佳希といった、2年前の悔しさを知る選手が多く残っている明治大だけに、今大会の決勝にかける思いは強いようです。なかでも一昨年は、68分に退場するという苦い思い出のある高橋は「2年前はあとすこしで負けた、という悔しさはある。今度こそ90分間ピッチの中で立って勝ちたい」とコメント。相手は、ユニバーシアード代表でのチームメイトでもある、呉屋大翔擁する関学大。呉屋を中心とした爆発的な攻撃力が予想されますが「今日の試合も後半は耐える時間が多かった。勢いのある流経大に、あれだけ攻められても、体を投げ出した守ることができた」と守備に自信をのぞかせます。
攻撃の関学大に、組織的な守備の明治大という盾矛対決となった東西決勝戦。総理大臣杯初優勝を手にするのはどちらのチームか。決勝戦は16日、キンチョウスタジアムで18時キックオフです。
■試合結果詳細(関西学生サッカー連盟ホームページ)
準々決勝戦の写真の一部は以下でご覧いただけます(会員登録不要です)。
筑波大学対関西学院大学
明治大学対流通経済大学