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2017年度第41回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント 決勝戦レポート(監督、選手コメント)
2017/09/11
夏の全国大会『2017年度 第41回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』もついにラストマッチ。夏の大学サッカー日本一の座をかけた決勝戦が、9月10日(日)にヤンマースタジアム長居で行われた。関東4校が占めたベスト4から、決勝戦に残ったのは前年度王者で3年連続の決勝進出を果たした明治大学と、3年ぶりの決勝進出となる法政大学。明治大学にとっては昨年に続く連覇を、法政大学は3年前、準優勝に終わった雪辱を果たす対戦となった。
関東勢同士、お互いによく知った相手同士の対戦は、準決勝戦同様に慎重な滑り出しとなった。両チームセットプレーでチャンスをつくりながら、試合の流れをつかもうとする。しかしやがて試合は、中盤での厳しいプレスでセカンドボールを支配する明治大学の流れに。その明治大学を予想外のアクシデントが襲う。16分、明治大学は左サイドの佐藤亮選手が左足首を痛めて負傷退場。試合の序盤に攻撃の起点を失う形となった明治大学だが、代わりに入った金原唯斗や、右サイドの櫻井敬基が躍動。FWの木戸皓貴や土居柊太がたびたびバイタルエリアを切り裂き、法大ゴールを脅かす。「前半は、法大さんの狙いに対して、セカンドボールを拾いながら背後をつく、というサッカーができていた」と、明大・栗田大輔監督。前半終了間際には、木戸のパスに走り込んだ金原がシュート。オフサイドの判定でノーゴールになったものの「この試合でいちばんヒヤリとしたシーン」(法大GK・関口亮助)と、法大のピンチが続いた。
後半に入っても試合は依然、明大のペースに。集中したディフェンスでシュートまで持ち込ませないものの、防戦一方となってしまった法大は57分、ついに1枚目の切り札を切る。「高さと強さがある」(法大・長山一也監督)という明大のセンターバック対策として起用した、189センチの長身FW松澤彰を下げ、前線でタメが作れるディサロ燦シルヴァーノを投入。「後半、流れを変えるために」(長山監督)あえてベンチスタートとしたディサロの投入で、法政大学はそれまで封じられていた右サイドの武藤友樹、紺野和也がチャンスに絡むなど、少しずつ試合の流れが変化。対する明大も、疲れの見える土居に代えて、スピードのあるスーパーサブ・小柏剛を入れて前線を活性化。両チーム早い攻撃を展開する中、思わぬシュートで均衡が崩れた。
67分、ディフェンスラインからのボールを頭で合わせたディサロは「(上田)綺世が走り込んでくるのが見えた」として、そのまま上田の元へとボールを落とす。ゴールまで距離のある位置だったが、ボールをキープした上田が選択したのはミドルシュート。「いつもなら、あのタイミングでは打たないシュート。だけど今日は特別点を取りたかったので」という上田の右足から放たれたシュートは、クロスバーを直撃するとそのまま内側へと鋭角に突き刺さる。押されていた法大が、少ないチャンスをモノにして先制点を挙げた。
試合を優勢に進めながらも、これで追う立場となった明大はさらなる猛攻を開始。GK・早川友基がディフェンスラインを押し上げると、ボランチの柴戸海も前線に上がってシュートチャンスを狙う。73分には河辺駿太郎、79分には中川諒真を投入し、前線をリフレッシュ。ゴール前でボールを保持し、何度となくセットプレーからチャンスを得るが、法大も集中した守備でゴールを許さない。85分には、明大・柴戸の決定的なシュートを腕本では軸など、法大GK・関口がファインセーブを連発する。逆に前掛かりになった明大に対し、法大は紺野がドリブルでカウンターを仕掛けて追加点を狙うなど、緊迫した時間が続く。
明大は84分にDFの岸本英陣を投入し、そのまま前線で起用するなどパワープレーで1点を狙うが、どうしてもゴールを割ることができない。後半45分が過ぎ、アディショナルタイムの表示は3分。その3分をしのぎきって法大が1-0で勝利。ルーキー、上田の先制点を守りきった法大が、3年前の決勝で敗れた雪辱をはたして35大会ぶり4回目の栄冠に輝いた。
【監督、選手コメント】
■長山一也監督(法政大学)
この大会では、初戦で九州チャンピオンの九州産業大学さんと対戦させていただき、3-0で勝つことができました。その勢いをもって次に関西チャンピオンの阪南大学さんと試合をしました。2点を先制されたのですがそこから粘り強く戦い、スコアをひっくり返して3-2までもっていったのですが、終盤に甘さが出てしまい、追いつかれた。延長、PK戦までを粘り強く戦うことができて準決勝に駒を進めることができました、若い選手のチームなので、終わらせ方に課題が残りました。準決勝は、大学サッカー界でも中心といえる実力をもつ筑波大学との試合になりました。関東前期リーグで1位のチームに先制でき、追加点こそ取ることができなかったのですが、守備のところではGKの関口(亮助)を中心に粘り強く戦って勝つことができました。阪南大戦のときは最後に失点してしまいましたが、筑波大戦ではしっかりと終わらせることができました。
決勝の相手は、昨年のチャンピオンチームである明治大学さんということで、本当に対戦相手には恵まれた大会でした。そうした強豪チームに勝つことで自信を得ることができたし、チームとしても個人としても成長しながら戦うことができました。決勝戦では3本しかシュートを打っておらず、内容的にはものたりないところもあります。けれど若いチームが粘り強く守備から入って、少ないチャンスをモノにして優勝することができて、本当によかったと思います。
前線については、準決勝のときに起用したディサロ(燦シルヴァーノ)、上田(綺世)、森(俊貴)、紺野(和也)がしっくりきていたのですが、明治大さんにはサイズのあるセンターバックがいる。松澤はJリーグの大柄な選手や、韓国遠征などでもサイズのある選手に収めるプレーをしてくれていたので、(対策として)松澤を起用しました。また今日は決勝ということで、堅いゲームになることが予想されました。だから流れを変えるという意味で、後半にディサロを入れようと。森は準決勝で筑波大の会津(雄生)くんを抑えるなど、守備のところでもがんばってくれる。決勝戦でも岩武(克弥)くんのところでしっかり守備をしてほしいと考えて起用しました。
上田のゴールについては、彼はもっているものが違うというか。スピードがあってヘディングもできて、体も強い。シュートもコースをしっかりと狙って、強いボールが蹴れる選手です。でも、あのタイミングで蹴れるというのは、なかなかセンスがあると思ったし、狙っていた証拠。素晴らしいゴールだったと思います。
■栗田大輔監督(明治大学)
今回は関東7位で出場しましたので、1週間で5試合を戦いました。それでもファイナルに残れた。そこについては選手のがんばりを評価したいと思います。決勝戦については、もちろん負けたくはなかったのですが、法政大学さんの粘り強いサッカーの中に勝負の厳しさを思い知ったという感じです。
今日の試合、法政さんの狙いは非常にわかりやすかったと思います。セカンドボールを拾い、真ん中でターゲットである松澤(彰)くんのところに当て、それを上田綺世くんが拾う。ですのでうちは、セカンドボールを拾って、サイドやボールを動かしました。センターバックとサイドバック、ボランチの間にかなりスペースがあったので、そこを使いながら背後をつく。前半は主導権をとりながら、いい距離感の中でサッカーをやれたと思います。また試合が始まった瞬間、法政さんにスピードがないことはわかったので、法政さんのスピードに合わせないことも意識しました。佐藤(亮)の怪我は想定外でしたが、その後に出てきた金原(唯人)がよく機能してくれたと思っています。
もう来週から関東大学リーグが再開します。チーム力が上がってきていることは間違いなく、また怪我人が戻ってきて全体の活力も上がってきています。選手たちには、それにつながるサッカーをしようと伝えました。ただ、この総理大臣杯では決定力の問題も明らかになりました。決勝戦では、あれだけチャンスがあっても外していた明治大と、ワンチャンスでも決めた法政大の差が出たと思っています。トレーニングの中で、いかに精度をあげていくか。そういったところが非常に大事になってくると思います。
■上田綺世(法政大学・1年・FW)
この試合は、始まった段階でチャンスが多い試合ではないというのは、自分でもわかっていました。だから、いつくるのかわからないチャンスを常に狙うというか、ワンチャンスを仕留める準備はしていました。その自分のシフトチェンジというか、ワンチャンスにかける姿勢が功を奏したのかと思います。あのシュートは、いつもなら打たないシュートですが、この試合は特別点をとりたかったので。昨日からずっと得点のイメージもありましたし、この試合では前向きにシュートを打てる局面も少なかった。ゴールに向かってプレーすることが本当に大事だと思っていたので、決まって本当によかったです。正直、どんなゴールだったか、距離とかもあまり覚えていないんですが、入ったならいいかな、と(笑)。あのときのメンタルや環境だったから決められたゴールだったと思います。
(押し込まれても)焦りはありませんでした。守備陣は絶対に守ってくれると思っていたので、あとはどこかで自分が1点を決めるだけだな、と。あれが、そのワンチャンスだったかはわからないのですが、それを結果に結び付けられたので……。自分の運と力だと思うので、それはよかったと思います。
■関口亮助(法政大学・GK・4年・主将)
自分は準決勝から出たのですが、準々決勝までゴールを守ってくれた吉田舜選手がいたからこそ決勝にこられたし、その他の試合に出られていない仲間たちが自分たちをずっとサポートしてくれていた。その仲間の思いや、監督が自分を使ってくれた気持ちを前面に出して、絶対に優勝しようと思って試合に臨みました。4年生で主将という立場の自分としては、2試合無失点完封は、意地でしかなかった。それに、このメンバーでできる最後の夏の大会なので、何か見せてやりたいという気持ちはありました。
ポジションを奪われたという焦りも相当あったんですけど、自分は主将ですし、チームをまとめなければならない。監督の采配がすべてだし、自分のやるべきことだけをやって、この日を待っていました。試合後に泣いたのははじめてです。それくらい、思いを込めて試合に臨みました。
自分たちはスーパースターのいないチーム。だからこそ粘り強くいこうということはいい続けていたし、徹底しました。最後の最後までディフェンスが足を出し、体を投げ出してくれて、ある程度のコースを限定してくれていたので、GKとしては守りやすかった。やるべきことは明確で、感謝したいと思います。
■ディサロ燦シルヴァーノ(法政大学・FW・3年)
(アシストは上田)綺世が動き出すのを見て、ボールを落としました。綺世が決めなくても、自分がこぼれを詰めて決めようと思っていたら、(ゴールが)入ってしまった。全部もっていかれたというか、1年生に決められてちょっと悔しいです(笑)。綺世とは私生活からコミュニケーションをとっているし、練習でも何回も組んでいるので、動きたいポジションはわかる。そういう部分では自由にやらせてあげているし、この試合ではそれがうまく出たのかな、と思います。
すぐに関東リーグが始まりますが、後期の初戦の相手は(準決勝で対戦した)筑波大。筑波大は天皇杯を勝ち上がるようなチームなので、総理大臣杯で勝ったことが「たまたま」だと思われないようにしたい。連続して勝てば、それが法政大の本当の力だと思われる。だからこそ、この優勝で気を抜かないよう、次の一戦を戦いたい。そして今度は自分がゴールを決めて勝ちたいです(笑)。
■木戸皓貴(明治大学・4年・FW・主将)
今日は自分と土居(柊太)の2トップで、(ボールが)収まる選手がふたりいたし、うまく自分のところでタメができたら周りがあく、というのはイメージできていて。自分が起点でいい攻撃ができていたし、イメージどおりだったのですが……結局、最後のところで決めきれなかった。
前半からシュートは狙っていたし、最後の仕掛けも意識していたのですが、どこかふわっとした入りになってしまった。それでも前半ゼロに抑えられていたので、ポジティブにとらえていたのですが。攻撃の最後のところが、勝負の分かれ目になったと思います。失点はあの1点だけだったし、試合内容的には成長が見られたゲーム。けれど、やっぱりうまいだけじゃ勝てない。もっと怖さが必要でした。法政大の気持ちも強かったし、そういう部分で負けていたのではないかと思います。
すぐにリーグ戦が始まるので、切り替えてこの悔しさをぶつけたちと思います。自分たちは後期11連勝することが目標。夏、そしてこの総理大臣杯で成長した姿を、後期リーグで見せられれば。三冠という目標は達成できませんでしたが、サッカー選手として、人として成長していければ悔いはないです。チーム全体での成長を追求できるよう、自分自身を見つめ直さないといけないと思っています。
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