『平成29年度 第66回全日本大学サッカー選手権大会』1回戦マッチレポート
2017/12/15
「平成29年度第66回全日本大学サッカー選手権大会」1回戦は、12月13日(水)に8試合が行われた。
○5年ぶりのインカレ出場となる新潟医療福祉大学(北信越地区第1代表)と、2年ぶりのインカレ出場の常葉大学浜松キャンパス(東海地区第3代表)の一戦。
前回出場時にはともに初戦で敗退した医福大と常葉大。常葉大のキックオフで始まった試合は、医福大が6番・霞恵介と8番・和田幹大を中心に攻撃を組み立てるものの、常葉大もDF陣が身体を張ってゴールを守る。均衡が破れたのは前半の27分。常葉大は27番・犬塚諒が浮き球パスを14番・酢﨑祥人に繋ぐと、そこからのパスを受けた13番・上田成立がセンターサークル付近からドリブルを開始。そのまま1人で前線まで持ち込むと、距離のある位置から左足を振り抜き、鮮やかなミドルシュートでゴールネットを揺らす。「試合前にコーチからシュートを打てばチャンスになると言われていたし、昨日の日本代表戦の昌子(源)選手のロングシュートが印象的だったので」と13番・上田。「左利きの上田を右に置いたメリットが出た」と澤登正朗監督が振り返るゴールで、常葉大が先制点を挙げる。
後半に入っても両者互角の展開となり、なかなかスコアは動かない。しかし試合も終盤に差し掛かった82分、常葉大が追加点を挙げる。先制点を挙げた13番・上田からのゴロパスを受け、右サイドで14番・酢崎がゴール前にクロスを入れる。するとそのクロスに、9番・濱田駿が右足ダイレクトで合わせて豪快にシュート。試合はそのまま終了し、0-2で常葉大が2回戦へと駒を進めた。
常葉大・澤登監督は「うちは守備がベースのチーム。(スコアがなかなか動かなくても)焦ることはなかった」と狙いどおりの試合展開に満足顔。ピッチ状態が悪かったこともあり、無理につなぐのではなく「割り切った戦いができたのもよかった」とコメント。「夏の総理大臣杯でベスト8入りしたことが選手たちの自信になった」とチームの成長に手応えを感じている様子だった。
次戦の対戦相手は、前回大会の王者・筑波大学。澤登監督は「7:3くらいの割合で相手にボールをもたれるだろう」と力の差を認めながらも「サッカーは、ポゼッションすれば勝てるというわけではない」とも。夏の成績を越えるベスト4入りに向け意気込んだ。
◯創部史上初のインカレに挑む東京国際大学(関東第6代表)と、3年ぶりの初戦突破を狙う北海道教育大学岩見沢校(北海道地区第1代表)との一戦。
試合は序盤から東国大が主導権を握る展開となった。東国大は10番・安東輝を中心に多彩な攻撃で岩教大ゴールを脅かすが、岩教大も15番・小川達也と8番・重森剛司の体を張った守備でゴールを割らせない。得点が動いたのは、前半終了間際の43分だった。東国大は左サイドを抜け出した19番・町田ブライトが、ペナルティエリアにカットインしたところで倒され、ペナルティーキックを獲得。キッカーの10番・安東が放ったシュートは一度、北教大GK1番・福永浩哉が弾いたが、そのこぼれ球に詰めていた10番・安東がボールを押し込み東国大が1-0とリードする。
後半に入っても試合は東国大ペースで進んだ。ハーフタイムに19番・町田ブライトに代わって入ったルーキーの27番・宇高魁斗が積極的にゴール前へと顔を出し、チャンスを演出する。すると69分、右サイドで14番・川上翔平から27番・宇高へ繋ぐと、グラウンダーのパスに中央にいた11番・進昂平が右足で合わせてゴール。東国大が流れるようなパスワークで追加点を挙げ、そのまま2-0で試合終了。東国大はインカレ初出場で初勝利を収めた。 東国大の前田秀樹監督は「相手の資料もなく、分析ができない分、プレスと球際できっちりと勝負することだけを徹底させた」と試合を振り返る。前半はなかなか点が入らず「あまりよくなかった」が、「後半、1年生の27番・宇高が活躍したのは収穫」と笑顔を見せた。5人の枠をすべて使い「間のないインカレで、そういうことをできたのもよかった」という。主将の5番・楠本卓海も「以前総理大臣杯で敗退した経験から、今日は守備から入ろうと思っていた。うちはいい攻撃時がそろっているので、いずれは点が入ると信じていた」とコメント。「リーグ戦ではほとんど無失点試合がなかったので、今日の無失点はとてもうれしい」とも。次戦の対戦相手は関西の強豪・阪南大学。「同じくらいのレベルの相手とせりあるより、阪南大や筑波大学のような強豪を食っていきたい」(27番・楠本)と抱負を語る初出場の東国大の躍進に注目したい。
〇17年連続34回目インカレ出場の仙台大学(東北地区第1代表)と、5年連続5回目の出場ながらインカレでは未だ無得点、未勝利のIPU・環太平洋大学(中国地区第1代表)との一戦。
試合は立ち上がりから環太大が積極的に攻める展開となった。すると25分、環太大が右サイドでコーナーキックを獲得。キッカー14番・梶山勝矢が中央へボールを蹴り込むと混戦の中からからボールを拾ったキャプテンの3番・安田拓馬が頭で押し込み、環太大が先制点を挙げる。
しかし後半は仙台大が猛攻を仕掛け、開始直後の49分に同点に追いつく。左サイドの24番・薄葉迅人から8番・林洋毅へとボールを繋ぐと、ゴール前中央に入ったクロスボールに14番・宮澤弘がヘディングシュートを放ち、ゴールネットを揺らした。さらにその10分後には仙台大がペナルティーキックを獲得。キッカーの14番・宮澤は、ゴール左下にシュートを決めて勝ち越しに成功する。なんとしても追いつきたい環太大だったが、仙台大DF陣の好守備によりシュートまで持ちこむことができない。しかし74分、仙台大の不用意なプレーで今度は環太大がペナルティーキックを得ると、キッカー9番・柴本慎也が冷静に右足で決めて2-2に。仙台大が同点に追いつき、試合は延長戦へと突入する。
延長戦は一進一退の攻防戦となり、延長前半はスコアが動くことなく終了。再び試合が動いたのは、延長戦後半の113分だった。ゴール前中央で環太大10番・坂東亘樹から20番・森園貴仁へとパスを繋ぐと、最後は9番・柴本が左足でゴールを沈め、環太大が再びリードを奪う。試合は2-3ままタイムアップの笛が鳴り、環太大が5度目の挑戦にして初の得点、そしてうれしい初勝利を収めた。
○今大会出場チームでは最長の24年連続、33回目の出場となる高知大学(四国地区第1代表)と、2年ぶり41回目の出場となる福岡大学(九州地区第1代表)の一戦。
福岡大キックオフで始まった一戦は、開始から高知大が攻勢に出る展開となった。一瞬の隙をついて高知大がゴールネットを揺らしたかと思われたが、これはオフサイドの判定で得点にはならず。すると次第に福岡大がリズムを掴み攻め、福岡大のファーストシュートがそのまま先制点となった。19分、7番・中村太一がコーナーキックで蹴り入れたボールに15番・大熊健太が左足で合わせる。これは相手GKにクリアされるが、こぼれ球を19番・中田永一が左足で押し込んだ。勢いに乗った福岡大は、前半終了間際の44分にも追加点。右サイドからのクロスを10番・梅田魁人が頭で反らし、最後は15番・大熊が決めてゴールネットを揺らした。
0-2と福岡大リードで迎えた後半も、試合の流れは福岡大。54分、左サイドからドリブルで持ち込んだ14番・山下敬大がそのままゴールを決め、0-3とリードを広げる。思うように責められない高知大は尻目に、85分には福岡大が試合を決定づける4点目。13番・石田皓大があげたクロスボールはゴール前で相手選手にクリアされるが、14番・山下が押し込んでゴールを決め、そのまま試合終了。0-4で福岡大が完勝を収めた。
〇2年ぶり18回目のインカレ出場となる九州産業大学(九州地区第3代表)と、3年連続39回目のインカレ出場を果たした中京大学(東海地区第2代表)の一戦。
初戦ということもあり、立ち上がりは両チームともにやや硬さが見られた。中京大がゆっくりとボールを動かしながら攻撃のチャンスを窺い、一方の九産大は自陣で陣形を整えブロックを固めるという構図が続く。そんな中、九産大は組織的な守備で中京大からボールを奪取すると、7番・赤木翼、10番・関恭範らの見事なコンビネーションから好機を作るが、得点には結びつけられない。対する中京大は8番・西村仁志を起点にサイドから攻め込もうとするが、前線との連携が上手く取れずに攻めあぐねてる。
0-0のまま迎えた後半は、九産大が序盤からペースを握り試合を進めていった。すると66分、ついにゲームが動く。九産大は10番・関が起点となり、左サイドから7番・赤木へとボールを送る。中央にポジションを取った19番・満沢紳之介がこれを受けるとすかさずシュートを放つが、これは中京大GKがセーブ。しかしこぼれ球を10番・関がしっかりと詰め、待望の先制点を決める。リードを許した中京大は流れを変えるべく、中盤の選手を入れ替えて攻勢を強めるが、九産大の堅い守りを崩し切ることができない。結局、九産大が先制点を守り抜き、試合終了。1-0で九産大が辛勝し、2回戦に駒を進めた。
○2年連続出場の関西大学(関西地区第4代表)と、2年ぶりの出場となった福山大学(中国地区第2代表)の一戦。
全国大会の初戦ということもあり、両チームともに硬い立ち上がりとなった。ボールを保持しながらゴールを目指す関西大と、サイド攻撃を中心に、カウンターで攻撃を仕掛ける福山大は、しかし互いに得点を決めることができず前半が終了する。
後半は、硬さが消えた関西大が猛攻を仕掛けるが、福山大も粘り強い守備で得点を許さない。攻めきれない関西大は60分、ついに怪我あがりのエース、17番・竹下玲王を投入。すると78分、関西大は24番・荒井大が中央にいた6番・塩谷仁にパスを出し、これを受けた6番・塩谷がミドルシュートを放つ。福山大のGK、1番・藤原真之介がこのシュートを何とか弾くが、こぼれ球にいち早く反応した17番・竹下が頭で押し込みゴール。関西大が先制する。ビハインドを負った福山大だったが、82分にコーナーキックのチャンスを獲得。6番・青竹翔太のキックは、一度、関西大の選手にクリアされるものの中途半端なクリアでゴール前は混戦に。その中でボールを拾った16番・泉勇也が左足で押し込み、福山大が同点に追いつく。1-1のままスコアは動かず、このまま延長戦突入かと思われた90+2分に再び試合が動いた。関西大は24番・荒井が左サイドからゴール前にクロスを放り込むも、これは福山大の選手にクリアされる。しかし、そのボールを拾った17番・竹下が右足でシュートを突き刺し勝ち越し点。終了間際の劇的ゴールを決めた関西大が、2回戦進出を決めた。
◯9年連続21回目の出場、夏の全国大会に出場できなかった悔しさを晴らしたい鹿屋体育大学(九州地区第2代表)と、初出場で初勝利を目指す松本大学(北信越地区第2代表)の対戦。
試合は、両チーム堅い守備を中心とした試合運びでなかなかスコアが動かない。鹿体大は、8番・樋口雄太と、湘南ベルマーレ内定の10番・松田天馬を中心に攻撃を組み立てるが、松本大の堅い守備を突破するまではいたらない。一方の松本大も、11番・高橋勇太と10番・高橋隼人を中心に攻撃するも、鹿体大のGK、12番・平田皓太郎がファインセーブを連発し、こちらもゴールを許さない。スコアレスのまま後半も半分が過ぎるが、74分についに試合が動いた。右サイドを抜け出した鹿体大8番・樋口がゴール前にクロスを上げると、これに19番・西村光明がヘディングシュート。一度はバーに阻まれたものの、跳ね返りを自身で押し込み先制点とする。さらに終了間際の90分にも、18番・小畑亮が右サイドを抜け出すし、中央にいた8番・樋口へとパス。8番・樋口はこのパスを落ち着いてゴール左隅に流し込みダメ押しの2点目を挙げる。松本大もアディショナルタイムに10番・高橋(隼)が、フリーキックからのこぼれ球を決めて1点を返すも反撃はそこまで。2-1で鹿屋大が初戦を突破した。
○初出場の富士大学(東北地区第2代表)と、東海地区第1代表として、2年連続12回目の静岡産業大学(東海地区第1代表)の一戦。
静産大キックオフで始まった一戦は、試合を通して互いにパスのずれが目立つ試合となった。前半はやや静産大が有利に試合を進めていたが、決定機を生み出せない。すると富士大はロングスローで何度かチャンスを作り、37分には、9番・木村比呂の左サイドからのスローインを、4番・伊藤仁也が頭で反らすと、最後は10番・清水光がヘディンシュートを押し込んで先制する。
1-0の富士大リードで迎えた後半は、一転して静産大が何度も決定機を作るが、富士大GKのビックセーブ、そして守備陣のブロックに阻まれてゴールラインを割ることができない。残す時間はアディショナルタイムの3分のみ。その3分が経過しようかというその瞬間、静産大が最後の攻撃に出る。左サイドから5番・諏訪部徹がスローインを入れると、4番・原田大雅が頭で反らして21番・栗田マークがヘディングで押し込む。静産大がラストプレーで劇的な同点弾を決めて追いつき、後半終了。試合は延長戦へと突入した。
延長戦で先にチャンスを掴んだのは富士大だった。延長前半の96分、富士大はコーナーキックを獲得。キッカーの7番・鈴木一朗がゴール前に蹴り込んだボールに10番・清水が頭で合わせ、ゴールネットを揺らす。富士大がリードして延長前半は終了かと思われたが、101分に今度は静産大がコーナーキックを獲得する。9番・遠山拓民のキックに、13番・村上涼が頭で合わせ、再び静産大が同点に追いつく。 2-2で迎えた延長後半はすぐに試合が動いた。開始すぐの109分、静産大は同点弾を決めた21番・栗田が、自らドリブルでゴール前まで持ち込み、そのままシュート。ゴールネットを揺らす。結局、これが決勝点となり2-3で試合終了。静産大が激闘を制し、2回戦へと駒を進めた。
2回戦は、12月16日(土)に江東区夢の島競技場で、筑波大学と常葉大学浜松キャンパス、阪南大学と東京国際大学が、上柚木公園陸上競技場にて、流通経済大学とIPU・環太平洋大学、大阪体育大学と福岡大学が対戦。浦安市運動公園陸上競技場にて、順天堂大学と九州産業大学、明治大学と関西大学が、栃木市総合運動公園陸上競技場にて、びわこ成蹊スポーツ大学と鹿屋体育大学、法政大学と静岡産業大学の試合が行われる。
1回戦は、インカレ初出場となる3校の中で、東国大だけが初勝利を収めた。また5年連続で初戦敗退をしていた環太大は、インカレ常連校の仙台大にうれしい初勝利を挙げ、2回戦へと駒を進めた。
2回戦からは、シード権を獲得した8校がついに参戦。シード権を獲得したのは、いずれも関東、関西リーグの上位校ばかり。1回戦を制した九州、東海、中国の強豪の力がどこまで通用するの。地域リーグの力と意地を見せてほしいところ。まだまだ激戦が繰り広げられそうだ。