2004年にスタートし、今年で15回目を迎える『DENSO CUP SOCCER 大学日韓(韓日)定期戦』。日本と韓国で交互に開催されているこの定期戦は、第1回以来ずっと"ホームチームが負けない"という結果が続いている。これまでの戦績は6勝6敗2分と、まったくの互角。今年、全韓國大學選抜をホームに迎え撃つ全日本大学選抜にとっては、文字どおり「決して負けることのできない」日韓戦となった。
試合は"日韓戦"らしい、激しいゴールの奪い合いとなった。
全日本大学選抜はスタートメンバー11人中、9人が最高学年である3年生。また2年生の10番・旗手怜央を含む、ユニバーシアード北京大会の優勝メンバー6人が顔を揃えるなど「この試合に勝つためのメンバー」(全日本大学選抜・松本直也監督)をピッチに送り込んだ。
「試合を通して全韓國大學選抜を圧倒したい」。試合前の記者会見で主将の13番・名古新太郎がそう意気込んでいたのとは裏はらに、なかなかブーストがかからない全日本大学選抜。全韓國大學選抜がロングボールでの攻撃を徹底し「鋭い立ち上がりだった」(同監督)ことに加え、「予想以上にピッチが凸凹だった」ことにも苦戦した。
それでも少しずつ全体の修正をし、20分には旗手が強烈なシュート、27分にも右サイドから崩して8番・鈴木徳真がゴールを狙うなどの決定機を作り始める。
そして30分、23番・相馬勇紀の左コーナーキックに、ゴール前まで上がっていたセンターバックの22番・菊池流帆選手が頭で合わせて先制点。高さが武器の菊池らしい、頭ひとつ抜け出した位置からのヘディングシュートをゴール右隅にたたき込んだ。
このゴールでリズムを取り戻したと思われた全日本大学選抜だったが、前半終了間際の43分に全韓國大學選抜が一瞬の隙をついてクリアーボールを奪取。17番・ソル・ヨンウのクロスに8番イ・ミンギュが頭で押し込む。GKの1番・小島亨介が反応するものの、ボールは小島の手を弾いてゴールに吸い込まれた。
1-1と振り出しに戻って後半を迎えることになった全日本大学選抜だったが、後半は序盤から主導権を握り、全韓國大學選抜を圧倒する。そんな中55分には、10番・旗手、2番・小池裕太とつないで前線を崩すと、マイナスに出たボールに走り込んできた23番・相馬が、ダイレクトで突き刺して追加点。全日本大学選抜が再びリードを奪う。さらにその4分後には、ボールをカットした7番・安部柊斗のスルーパスに11番・大橋祐紀が反応。相手の裏へと抜け出すときっちりとシュートを決
め、全韓國大學選抜を引き離す。
流れは完全に全日本大学選抜へと傾いた。2点のリードを得た全日本大学選抜は60分、1ゴール1アシストの23番・相馬を下げて、14番・紺野和也を投入。しかし、その交代で生じたわずかな隙を全韓國大學選抜は見逃さなかった。
62分、リスタートから17番・ソル・ヨンウがボールを奪って14番・イ・ビョンジュにパスを送ると、14番イ・ビョンジュが右サイドをドリブルで独走。強烈なシュートを放ち2点目を挙げる。
1点差に詰められた全日本大学選抜だったが、68分には10番・旗手が強引に中央を突破。11番・大橋にボールを預けてフリーになると、再びボールを受けてGKとの1対1を冷静に決めて4点目。再び、全韓國大學選抜とのリードを2点に広げる。
勝利を確信した全日本大学選抜は71分、大橋に代えて20番・末吉塁を左サイドに投入。ワントップとなった10番・旗手が強烈なミドルから追加点を狙うなど攻撃の手を緩めなかったが、そのあとにまさかの展開が待っていた。
78分にロングボールからの大きな展開で全韓國大學選抜に一気に前線に攻め込まれると、クリアーボールがゴールに吸い込まれてオウンゴールに。4-3と、またもや1点差に詰められてしまう。
その直後にはFWの9番・草野佑己、左サイドバックの20番・黒川圭介選手を投入して立て直しを図るが、ゴールまでには結びつかない。14番・紺野が右サイドからの鋭い突破でチャンスをつくるが、決定的なゴール前へのパスは、キャプテン・名古がふかしてしまう終了間際の9番・草野のシュートは惜しくもポストを叩き、なかなか点差を開くことができない。
逆にアディショナルタイムには全韓國大學選抜に右サイドをつかれ、ピンチを迎えるがこれはGKの1番・小島がきっちりブロック。辛うじて1点差を守り切った全日本大学選抜が勝利し、ホーム無敗記録を8に伸ばした。
「ゴールは4得点ともいい形で取れた」(松本監督)との言葉どおり、攻撃面では選手それぞれが強みを活かして得点を重ねた全日本大学選抜だったが、一方で「3失点では力の足りなさを感じた」(同監督)というように守備面での連携不足を露呈する結果となった。約2週間に及ぶセルビア遠征では、U-19年代のアンダーカテゴリーのチームとしか対戦できず、チームとして"強い相手""本気の相手"と戦う経験が不足していたことは否めない。結果「最後まであきらめないで戦う」(5番・ユ・ウォンジョン主将)という全韓國大學選抜に苦戦を強いられた。「国際大会として考えたときには、まだまだ隙がある」との反省を口にした松本監督だったが、それでも「点を取れた、負けられない試合に勝てたというところをよしとしたい」と、結果を出したチームをねぎらった。