全国9地域・24大学が参加する大学サッカーの夏の全国大会、『2019年度第43回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント』が8月29日に関西各地で開幕した。
全国大会の常連校同士の対戦。先手を取ったのは東北代表の仙台大だった。15分、仙台大は横浜FC内定の10番・松尾佑介が左サイドから仕掛け、9番・樋口颯太がつなぐと、最後は3番・井上友也が右足で押し込んで先制点を挙げる。仙台大は32分にも5番・本吉佑多がコーナーキックを頭で押し込み追加点。0-2とリードを広げるが、ここから中国代表・環太平洋大が反撃に出る。
まずは39分、10番・赤木直人がペナルティーキックを決めて1点差に詰めると、後半の72分、3番・里出怜央がコーナーキックからのヘディングシュートを決めて同点に。スコアは2-2となり、試合は振り出しに。しかし、その5分後の77分に仙台大がコーナーキックから4番・藤岡優也が決めて再びリードを奪うと、終了間際の89分にも、10番・松尾のパスを受けた11番・岩渕弘人がゴールネットを揺らし、ダメ押しの4点目。一時は追いつかれた仙台大だったが、2ゴールの起点となった10番・松尾らの活躍により、最後には2-4と環太平洋大を突き放して2回戦へと駒を進めた。
4年ぶりの出場となった関西第3代表の大阪経済大と、5年連続出場・東海第3代表の中京大の対戦は、立ち上がりから中京大が主導権を握る展開となった。FWの4番・加田淳哉を中心に、前半から何度となく大経大ゴールに迫る中京大だがゴールネットを揺らすことなく、スコアレスで試合を折り返す。
すると後半、押され気味だった大経大が先制点。62分、中京大のGKのこぼれ球を、9番・植村宥紀が詰めてゴールを挙げる。ワンチャンスを確実に仕留めた大経大に対し、1点を追う中京大が怒涛の攻撃を見せるがゴールまでは至らない。このまま大経大が逃げ切るかと思われた89分、しかし中京大に起死回生の一撃が生まれる。9番・西口黎央が左サイドを突破。ゴール前に上げたクロスに交代したばかりの24番・水口湧斗がヘディングシュートを叩き込み、ついに中京大が同点に追いつく。勝ち越し点を狙う中京大はアディショナルタイム突入後も攻撃の手を緩めず、90+5分に10番・東家聡樹のパスを受けた7番・加藤弘也がドリブルで独走。そのままゴール前まで持ち上がると、冷静に右足を振り抜き、劇的な逆転弾。このゴールが決勝点となり、中京大が逆転勝利で大経大を下した。
21年ぶり3回目の出場となる北海学園大と、37年ぶり2回目の出場となる拓殖大。ともに長いこと本大会には縁がなく、久しぶりの出場となる大学のたいせんは、明暗が分かれる結果となった。
試合が動いたのは開始わずか5分。9番・長尾吉家の突破からチャンスを作った拓大が、11番・増田力也にパスをつなぎ、8番・奥村晃司が流し込んで先制する。その後も拓大の一方的な攻撃が続き、11分には11番・増田、2番・筌口拓とつないで9番・長尾が追加点。さらに13分、14分には7番・池田廉が連続ゴールを決め、拓大は開始わずか15分弱で4ゴールをマーク。しかし4点を奪っても拓大の勢いはやまず、25分にはゴール前の混戦の中から10番・小宮嶺が流し込んで5点目。その3分後には11番・増田のヘディングシュート、35分には9番・長尾のミドルシュートと次々と点を重ねる。前半終了間際の44分には、7番・池田が10番・小宮のクロスに頭で合わせ、ハットトリック達成となる8点目。前半のシュート数は拓大の13本に対し北海学園大が0と、拓大が北海学園大を圧倒する45分間となった。
拓大の玉井朗監督は「ほとんどプレッシャーがなかった。相手は自分たちが得点を重ねても、引いて守るという形を変えなかったので、パスがうまく回せた」と振り返るが、後半に入ると「相手もプレスをかけてきた」(同監督)。ハーフタイムには拓大が大量リードの状況から7番・池田、9番・吉家を下げて17番・高橋和希と28番・加賀美右京を投入。一方の北海学園大は試合の流れを変えるべく、こちらも9番・内記太樹と22番・矢羽々陸をピッチに送り出す。後半の序盤は北海学園大がボールを奪い、攻撃を仕掛けるシーンも見られたが、64分には拓大が追加点。途中出場の28番・加賀美が9点目を決める。さらに拓大は74分、交代出場したばかりの26番・田中幸大が10番・小宮のクロスに頭で合わせてついに10点目、二桁ゴールを達成。26番・田中はその5分後の79分にもヘディングシュートで追加点をあげ、スコアは0-11に。後半は北海学園大も奮闘を見せるが、拓大のプレッシングと正確なパスに打開策を見いだせず、屈辱的な大敗を喫した。
拓大・玉井監督は「立ち上がりすぐに点を取れたのが大きい。そのまま追加点を決めたことで完全に流れに乗れた」と試合を振り返る。「8番・奥村からいい縦パスが出たし、3人目を使ったプレーも自由にできた」と満足顔。37年前は2-4で敗れ、初戦敗退。相手は札幌大と奇しくも北海道代表チームで、拓大は37年ごしのリベンジをはたし、大会初勝利を手にしたことになる。リーグ戦でも滅多にない大勝を挙げた拓大だが「往々にして大勝のあとが危ない」との警戒も忘れない。次戦の対戦相手、関西大は「タイプ的にもバランス的にも似たようなチームなのでやりやすい」としながらも「質は相手のほうが上。胸を借りるつもりで臨みたい」と気を引き締めた。
九州の王者・福岡大と、近年北信越で不動の地位を得た新潟医療福祉大の試合は、思わぬアクシデントに見舞われる波乱の展開となった。
両チーム一進一退の攻防戦を繰り広げる中、先に試合を動かしたのは福岡大。「怪我があり90分間は無理。最初から30分を過ぎたところで投入する予定だった」(福岡大・乾真寛監督)という9番・梅木翼を37分に投入すると、交代してすぐの40分に早速9番・梅木が結果を出す。コーナーキックからのこぼれ球を6番・河原創が拾ってパスを送ると、すかさず9番・梅木がこれを押し込み、福岡大が先制する。
先制点を挙げたことで「相手の焦りを引き出そうと思っていた」という福岡大だったが、ハーフタイムに天候が悪化。後半開始直後から豪雨、そして雷雨となり52分に試合は一時中断となった。天候の回復を待ち、試合は約30分後に再開されたが「中断時間に新潟医療福祉大に対策を寝られてしまった」という乾監督の言葉どおり、後半は新潟医療福祉大がラインを上げて福岡大ゴールに迫った。75分には、3分前にピッチに送り出されたばかりの11番・佐々木快が、クリアボールを拾った6番・松本雄真からのパスを受けて同点ゴールを突き刺す。その後は両チームともチャンスを作りながらも決めきれず、試合は延長戦に突入。しかし延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦に委ねられた。
PK戦は3巡目まで全員が成功。4巡目は先攻の福岡大の14番・今田源紀が成功したのに対し、新潟医療福祉大の10番・シマブクカズヨシのシュートはバーの上に。続いて福岡大の5人目、3番・菅田真啓が決め、この瞬間に福岡大の2回戦進出が決定した。
福岡大の乾監督は「90分内で勝利できればもっとよかったのだが」としながらも2回戦進出にほっとした様子。「新潟医療福祉大さんを事前にスカウティングして、簡単に勝てるチームではないことはわかっていた」との言葉どおり、相手には最後まで苦しめられたが、「後半に交代した選手がよくがんばってくれた」。次戦の対戦相手は本大会で何度も優勝経験のある古豪・駒澤大。乾監督は「この試合とはまったく違うタイプの相手。よく知る相手だけに、どれくらいのバトルになるのかを楽しみにしてほしい」と語った。
試合は拮抗した展開のまま、スコアレスで終盤に。ようやくスコアが動いたのは、80分のことだった。8番・澤朋哉が上げた浮き球のパスを、交代出場の31番・野中魁が頭で合わせて東海学園大が先制。均衡が破られると、それまで攻めあぐねていた東海学園大が一気に日本文理大ゴールに襲いかかる。86分には、10番・神谷椋士からのパスを受けた4番・白川大吾廊が右足を振り抜いて追加点。リードを2点差に広げると、アディショナルタイムに入った90+4分には、ユニバーシアード代表、14番・児玉駿斗のドリブル突破を起点に、28番・加藤大貴がダメ押しの3点目を決めて勝負あり。終盤に怒涛のゴールを重ねた東海学園大が、日本文理大を下して2回戦進出を決めた。
関西第4代表出場とはなったものの、現在関西リーグを首位で快走する大体大が、実力どおりの試合運びを見せた。試合が動いたのは、前半終了間際の45+1分、19番・野寄和哉からのパスを受けた27番・瀬尾純基のシュートがゴールネットを揺らし、大体大が先制する。後半に入ると大体大はさらに優勢となり、北海道教育大岩見沢校のシュート数はゼロと攻撃の緒を掴むことすらできないまま。大体大はアディショナルタイムの90+3分、ゴール前の混戦の中で24番・高橋一輝がヘディングシュートを押し込んで、勝負あり。大体大が2-0で初戦を危なげなく勝利した。一方の北海道教育大岩見沢校は、これで4年連続の初戦敗退。また北海道第2代表の北海学園大学も敗れたことにより、北海道代表はすべて初戦敗退となった。
四国と静岡、それぞれ第1代表の誇りを懸けて挑んだ一戦は、終始静産大が優勢に試合を進めながらも決めきれず、スコアレスのまま90分が終了。勝負は延長戦に持ち込まれた。90分間で静産大が放ったシュート数20本に対し、高知大が放ったシュートは後半にわずか3本のみ。高知大の粘り強い守備に静産大が攻めあぐねる展開となったが、勝負は思わぬ形で決着がついた。延長戦に入ってすぐの92分、静産大はコーナーキックを獲得。13番・武藤英暉の右コーナーからのキックに、18番・早川諒祐が頭で合わせて待望の先制点を挙げる。後半から投入された2人がついにゴールをこじあけると、これが決勝点となり試合終了。110分にわたる戦いを静産大が制した。
九州の雄・鹿屋体育大と本大会初出場となる四国学院大学の対戦。試合は初出場の四国学院大が奮戦し、38分には鹿屋大から先制点を奪取。29番・ 祝佳史のドリブル突破から、11番・久保田蓮が右足のシュートを決める。思わぬ失点を喫した鹿屋大だったが、ハーフタイムに一気に3人を変える思い切った起用でこれに対応。11番・西村光明、16番・根本凌、25番・山本廉をピッチに送り出した。するとこの起用が的中し、試合の流れは一気に鹿屋大に。まずは52分、交代したばかりの16番・根本からのパスで10番・藤本一輝が同点弾を挙げると、その5分後の57分、スローインの流れから23番・山口卓己が決めてあっさり逆転に成功する。その後は鹿屋大の一方的な展開となり、四国学院大は防戦一方に。鹿屋大はアディショナルタイムに入った90+5分にも、16番・根本が決めてダメ押しの3点目。鹿屋大が見事な逆転で2回戦へと駒を進めた。四国学院大は先制点を挙げながらも、初勝利ならず。これで四国勢は初戦で姿を消すこととなった。
1回戦の結果、北海道、北信越、中国、四国の各地域代の敗退が決定。東海は代表3大学がすべて2回戦進出をはたした。
2回戦からは昨年度優勝校の明治大学をはじめ、関東・関西のシード校が登場。多数のJリーグクラブ内定選手が登場し、さらなる熱戦が繰り広げられる。
2回戦は9月1日(日)に開催。J-GREEN堺S2フィールドでは明治大学対仙台大学、中京大学対順天堂大学が対戦。また同S5フィールドでは法政大学対静岡産業大学、鹿屋体育大学対びわこ成蹊スポーツ大学が戦う。みきぼうパークひょうご第1球技場では関大大学対拓殖大学、福岡大学対駒澤大学が、第2球技場では立正大学対東海学園大、大阪体育大学対筑波大学の試合が行われる。
キックオフ時間はすべて第1試合が11:00で、第2試合が13:30。夏の大学王者を目指し、16大学が激突する!