JUFA 全日本大学サッカー連盟

総理大臣杯
『2019年度 第43回 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント』準決勝戦レポート
2019/09/06


 ついに準決勝を迎えた『2019年度 第43回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』。ベスト4には関東2チーム、関西2チームが残り、準決勝はそれぞれ東西対決となった。9月5日にヤンマーフィールド長居で行われた試合は、激しい雷雨のため第1試合のキックオフが1時間半後ろにずれ込むアクシデントに見舞われたが、選手たちは慌てることなく落ち着いて試合に臨んだ。




大阪体育大 0(0-0)1 法政大



 2年連続の決勝進出を狙う大阪体育大学と、2年ぶりの決勝進出を目指す法政大学。試合は、前期首位で関西学生リーグを折り返した大体大が持ち前の粘り強い守備で、また一方の法大は天皇杯3回戦でJ1のガンバ大阪を退けた攻撃力を存分に発揮する展開となった。序盤からボールを支配し、大体大を押し込んだ法大だったが「相手の背後を狙うばかりになっていた」(法大・長山一也監督)と、次第に単調な攻撃に終始してしまう。対する大体大もカウンターからのチャンスをうかがうが、サガン鳥栖内定のエース、10番・林大地が厳しいマークにあい、思うように抜け出せない。





 スコアレスで迎えた後半、まずは法大が動く。63分に幅のある攻撃を展開できる14番・森俊貴、66分には高さのある9番・松澤彰を立て続けに投入。するとその7分後の70分に均衡が破られる。法大は右サイドからのロングボールに、19番・平山駿が反応。ボールを収めてFC東京内定の8番・紺野和也にパスを出すと、紺野が中に切れ込み、左サイドにクロスをあげる。ボールを受けた14番・森は、ペナルティエリア内で相手をかわすと右足を振り抜いてゴールネットを揺らす。「連戦なので、途中から出る選手がキーマンになると思っていた」(長山監督)という指揮官の期待に応える形で、法大が先制点を挙げる。法大はその後、集中した守備で大体大にシュートの1本も許さず、1点を守りきってタイムアップ。前後半を通じて大体大のシュートをわずか1本に抑えた法大が、完勝で2年ぶりの決勝進出を決めた。







長山一也監督(法政大学)

先手を取ろうと言っていたが、大阪体育大学さんも粘り強いサッカーをされるので、このままスコアレスでズルズル90分が終わるのだけは避けたい。後半勝負と思い、その準備はしていた。また相手の右サイドバックにルーズなところがあったので、そこをつくように伝えていたのだが、交代出場の14番・森がうまく走り込んでくれた。いいボールの持ち方でゲームをコントロールできていたが、効果的な攻撃ができなかったという反省点もある。駆け引きという部分ではまだまだ。ただ、失点をゼロに抑えられているので、そこは継続して決勝に臨みたい。昨年は初戦敗退という悔しい思いをしたので、その雪辱を優勝という形で果たしたい。



森俊貴選手(法政大学・MF・4年)


(紺野)和也が中に抜けたとき、「ここにくるかな」というフリーの位置に走り込んだところ、思ったとおりの、100点満点のボールが来た。トラップも非常によかった。ゴールは本当に奇跡的だったと思う。自分は和也のようなドリブラーではないが、相手の動きを見て抜くドリブルは持ち味だと思っている。今日はその持ち味を活かして、相手の体がずれた逆をつくことができてよかった。





明治大 2(2-0)1 関西大



 大会史上初となる5年連続の決勝進出、そして昨年の優勝に続く連覇を狙う明治大学と、14年ぶりの決勝進出を目指す関西大学の“明関戦”。7月に行われた定期戦では関西大が先制点を奪ったが、その反省と「初戦の仙台大学戦、準々決勝の順天堂大学戦と明大らしいサッカーができなかった」(明大8番・森下龍矢)ことからか、指揮官は「最初から明大のサッカーを徹底しよう」(栗田大輔監督)と名言。明大は立ち上がりから得意のハイプレスで関西大を追い込む。「相手の背後へのアクションを増やし、プレス、球際、切り替えの3原則を徹底することが最大の守備になる」(同監督)とする明大は、FWの11番・佐藤亮を中心に中盤からも次々とシュートを放ち、関西大のゴールを狙う。すると20分、左サイドでFC東京内定の9番・安部柊斗がボールをキープ。サガン鳥栖内定の8番・森下が相手DFをかわしてゴール前にボールを入れると、11番・佐藤が滑り込むようにしてボールを押し込む。さらにその1分後の22分には、10番・小柏剛が左サイドをドリブルで突破。DFをひきつけてゴール前にパスを出すと、そこにはフリーのFC東京内定の2番・中村帆高。2番・中村が左足を振り抜き、2試合連続となるゴールで、明大が2-0とリードを広げる。





 後半に入ると、関西大も交代出場の18番・松尾勇佑選手らがチャンスを作り、64分にはコーナーキックを獲得。8番・荒井大の右コーナーキックはGKに弾かれるものの、それを9番・高橋晃平が左足で押し込んで関西大が1点を返す。関西大は68分、準々決勝戦で逆転勝利を呼ぶ2ゴールを挙げた27番・宮脇和輝を投入。巻き返しを図るが、「今日は疲れた選手から変えていく、と選手には伝えていた」(栗田監督)との言葉どおり、明大も次々とフレッシュな選手をピッチに送り込み、関西大に次の一手を打たせない。結局、関西大の反撃は1点に留まり、わずかシュート2本でタイムアップ。明大が5年連続で決勝戦へと駒を進めた。







栗田大輔監督(明治大学)


関西大学は素晴らしいチームなので、今日は立ち上がりから明治大学のサッカーを徹底し、疲れた選手から変えていこうと選手には伝えていた。相手の両サイドバックに高い位置を取らせないこと、背後を狙う縦に速いサッカーを目指すということはできたが、シュートを17本も放ちながら2点しかとれなかったのは自分たちの問題によるところが大きい。決勝戦の相手の法政大学は非常に勢いのあるチームなので、その勢いにのまれないようにしたい。



佐藤亮(明治大学・FW・4年・主将)


 ゴールシーンについては8番の森下龍矢が抜け出したとき、マイナスでボールを受けるか、相手DFの間に走り込むか一瞬迷った。けれど8番・森下の顔が上がった瞬間、間に流れるほうが最善だと信じられたので走り込んだ。自分にとってのこの大会は、怪我や病気で決勝戦に出られなかった悔しい大会のひとつ。決勝戦進出が決まった今、ようやくスタートラインに立てた気持ちだ。決勝戦では、(明大サッカー部のある)八幡山に残っていた仲間たちも応援に駆けつけてくれる。あとはその応援を力にして、自分のゴールで結果を出して3年分の思いを晴らしたい。



森下龍矢(明治大学・MF・4年)


 今日は9番の安部柊斗と久しぶりにスタメンで出場したが、あそこにパスを出してくれる9番・安部がいて、11番・佐藤亮がゴール前に思い切り走り込んでくれたからこそ、得点につながった。今年の明大の絆、信頼関係から奪えた得点だと思う。自分は関西大学との定期戦に出場したことはないが、ある程度プレーの特徴を知った相手に対して駆け引きができたのはとてもおもしろかった。天皇杯で僕たちは川崎フロンターレに敗れて、法大はガンバ大阪に勝った。それもあって、たぶん世間的な知名度は法大のほうが上だと思う。だからこそ絶対に勝って、“今年は明治が強い”ということを見せつけたい。





 決勝戦は、2年ぶり5度目の優勝を狙う法政大学と2年連続3度目の優勝を目指す明治大学が対戦。連覇を狙う王者・明大と昨年度インカレの覇者・法大という昨年度の夏と冬の王者が激突することとなった。両者は2年前の本大会決勝戦でも対戦し、そのときは上田綺世(現鹿島アントラーズ)の得点で法大が優勝を手にしている。明大の8番・森下が「試合に出ておらず、スタンドで応援していたにも関わらず号泣してしまった」と思い出を語るように、明大にとっては忘れられない屈辱の試合。はたして明大がその悔しさを晴らす結果となるのか。一方の法大は、エース・上田を鹿島に送り出しながらも他選手が大きく成長。先月には天皇杯でJ1のガンバ大阪を下すなど、今もっとも勢いのあるチームだ。大学サッカーの最高峰を名乗るにふさわしいラストマッチは、9月7日(土)、ヤンマースタジアム長居で18時から行われる。