『2019年度第68回全日本大学サッカー選手権大会』は2回戦の8試合が12月14日(土)に行われた。
圧倒的な強さで関東リーグを制し、総理大臣杯と合わせて全国大会二冠を狙う明治大学(関東地区第1代表・11年連続19回目)と、1回戦は4得点を挙げて快勝し、節目の創部60年目で優勝を狙う中京大学(東海地区第3代表・2年ぶり40回目)の一戦。
前半の立ち上がりは明大がボールを保持し、中京大が引いて守る構図となった。中京大は10番・東家聡樹が裏に抜け出して好機を窺うも、その前に明大の守備陣が大きく立ちはだかる。すると26分、明大のコーナーキックのこぼれ球を拾った3番・佐藤瑶大が、ペナルティーエリア内で8番・森下龍矢とパス交換。3番・佐藤のクロスを17番・狩土名禅がワントラップで抜け出し、左足で流し込んで明大が先制する。さらに43分には7番・中村健人のクロスを20番・佐藤凌我が頭で合わせ追加点。明大が2-0トリードして前半を終える。
後半も終始明大ペースとなった。明大は中京大DFのハンドで得たペナルティーキックを、ゴールキーパーに止められるなどして攻めあぐねていたが、60分にダメ押しの3点目。中京大DFのクリアミスを17番・狩土名が見逃さずに拾うと、そのまま持ち込み落ち着いて決め勝負あり。合計20本のシュートを放ったうえ、相手のシュートを1本に抑える隙のない戦いぶりを見せた明大が、準々決勝へと駒を進めた。
1回戦突破の勢いで勝ち進みたいびわこ成蹊スポーツ大学(関西地区第3代表・2年ぶり4回目)と、アンダー世代の代表をはじめタレントを多数擁する筑波大学(関東地区第6代表・4年連続38回目)の一戦。
試合序盤は、筑波大が7番・三笘薫の突破や20番・小林幹のミドルシュートなどでチャンスを作るが得点には至らない。対するびわこ大も15分過ぎからペースを握るものの、こちらも決め切れないまま、スコアは動かず前半を終えた。
両チーム果敢に攻めるが、後半もゴールが遠いまま試合は終盤へ。すると72分、遂に試合が動く。筑波大がフリーキックのチャンスを獲得。14番・山原怜音のキックに頭で合わせたのは4番・山川哲史。筑波大は、後半初めてのシュートを先制点に結び付けた。このまま逃げ切りたい筑波大だったが、びわこ大も執念を見せる。試合終了間際の89分、18番・井上直輝がドリブル突破から14番・千川原慎へとパス。これを冷静に押し込んでびわこ大が同点に追いつくと、勝負は延長戦へともちこまれた。
延長前半の102分に、筑波大は再びフリーキックのチャンスを得る。キッカーは14番・山原。ゴール前に入れたボールを12番・森侑里が折り返し、強烈なボレーシュートを突き刺したのは、またもや4番・山川。4番・山川の殊勲の2ゴールで120分の勝負を制した筑波大が、関東王者・明治大学への挑戦権を手にした。
悲願のベスト8入りを目指す新潟医療福祉大学(北信越地区第1代表・3年連続6回目)と、創部初となるインカレ出場で、初勝利を狙う立正大学(関東地区第3代表・初出場)との一戦。
前半開始直後から医福大が両サイドを広く使い、細かいパスワークから9番・矢村健にボールを集める。しかし立正大の堅い守りを前に崩すことができない。しばらくは拮抗した状況が続くが、ペースは次第に立正大へ。立正大は18番・平松昇がボールをサイドに配給し、13番・武田夏輝のクロスからチャンスを覗うが、こちらもゴールならず。スコアレスで前半を折り返した。
後半も立正大がリズムをつかみ、武器である鋭いカウンターから何度となく医福大ゴールに迫る。対する医福大は、フリーキックからチャンスを作るが、こちらも枠を捉えきれず、ともに無得点のまま延長突入かと思われた。だが、試合はアディショナルタイムに動いた。90+3分、立正大はわずか1分前に途中出場した5番・中塩大貴が、得意のロングキックを前線に入れる。すると、これに7番・梅村豪が頭で合わせてゴール。土壇場で立正大が待望の先制点。追いつきたい医福大も、果敢にゴールへと向かうが、ほどなくして試合終了。劇的なゴールで勝利を得た立正大が、大会初勝利で初戦を突破した。
関西リーグ屈指の攻撃力を誇る関西学院大学(関西地区第2代表・2年連続22回目)と、Jリーグ内定者を2人擁する東海リーグ王者の東海学園大学(東海地区第1代表・2年連続5回目)の一戦。
試合は開始早々から試合が動いた。まずは5分、コーナーキックから混戦になっていたボールを関学大19番・藤井敦仁が素早い反応でゴールに押し込み先制。しかし直後の7分、今度は東園大が相手の一瞬の隙をつく。川崎内定の22番・神谷凱士ロングボールに、双子の弟である10番・神谷椋士が反応。スピードを活かして裏に抜け出すと、巧みなファーストタッチからゴールへと流し込み、すぐさま同点に追いつく。しかし関学台も24分、右サイドの崩しから、ゴール前に上げたクロスに16番・安羅修雅が鮮やかなボレーシュートを決めて、再びリードを奪う。すると、今度は東園大。前半終盤の35分にペナルティーキックを獲得すると、名古屋内定の14番・児玉駿斗が冷静に沈めてまたしても同点に追いつく。打ち合いとなった前半のラストゴールは関学大。前半終了間際の43分、左サイドに走り込んだ16番・安羅のクロスに、5番・本山遥が頭で押し込み3点目。鮮やかな崩しから、関学大が3-2と勝ち越して前半を終了した。
後半は前半とはうって変わり、終始関学大ペースで進んだ。70分には、コーナーキックからまたしても19番・藤井が頭で押し込み、関学大がダメ押しの4点目。東園大は反撃叶わず、4-2でタイムアップ。激しい打ち合いを制した関学大が、ベスト8に進出した。
これが初のインカレ出場となる桐蔭横浜大学(関東地区第2代表・初出場)と、1回戦で北陸大学に劇的な勝利を収めた常葉大学(東海地区第2代表・3年連続12回目)の一戦。
序盤は、両チームともチャンスを作り切れない時間が続いた。桐蔭大は長い時間主導権を握りながらも、なかなかシュートに持ち込むことができない。それでも次第にペースを掴み始め、25分には11番・下村司が左足を振りぬき、ミドルシュートを放つがこれは常葉大のGK1番・坪歩夢の正面に。対する常葉大はショートカウンターからゴールを狙うものの、桐蔭大のコンパクトな守備を崩すことができない。前半終了間際の42分には桐蔭大の15番・松本幹太から11番・下村にパスが通り、決定機を迎えるものの、シュートは枠をとらえきれず左に外れてゴールならず。前半は0-0で終わった。
巻き返しを図る常葉大は後半開始から23番・岸孝宗郎、58分には5番・山田温人を投入。68分にも30番・横山隼介をピッチに送り込むなど、次々とフレッシュな選手を入れて試合の流れを引き寄せようとする。しかし桐蔭大のペースを崩せず、70分には桐蔭大がついに均衡を破る。6番・橘田健人からのスルーパスを受けた10番・鳥海芳樹が右足を一閃。強烈なシュートをゴールに突き刺し、桐蔭大が待望の先制点を挙げる。同点に追いつきたい常葉大は80分に2番・野田椋雅がシュートを放つが、枠を捉えきれず得点とはならず。その後は桐蔭大が試合を優位に進め、1-0で試合終了。常葉大は昨年と同じく柏の葉での敗退が決定した。一方、インカレ初出場の桐蔭大はタイトな試合を勝ちきって準々決勝進出を決めた。
桐蔭大の安武亨監督は「どの試合も難しいが、とにかく勝つことが大切」コメント。前半は初戦ならではの緊張感もあったが「それでも勝ち切ることにチームの成長を感じる」と笑顔を見せた。ノックアウト方式の本大会で「1点を取るのはそう簡単ではない」と覚悟していた安武監督は「延長戦でもPK戦でも勝利できればいい」と言って選手たちを送り出したが「どのような展開になっても勝つ自信はあった」ときっぱり。「1勝するのも大変」という関東大学リーグで連勝し、かつ2位につけたことが大きな自信となり「選手たちが自分たちの強さを疑わなくなった」と、この勝利に本大会の手応えを感じている様子だった。
3年連続のベスト8入りを狙う福岡大学(九州第1代表・3年連続43回目)と、2連覇を目指す前回王者の法政大学(関東地区第4代表・4年連続31回目)の一戦。
九州リーグ王者と昨年度のインカレ覇者との一戦は、90分間にわたり一進一退の攻防戦が繰り広げられた。試合は、立ち上がりから法大がボールを保持するも、福岡大の堅い守備を前にペナルティーエリアまで侵入できず、前線に入れたクロスもはじき返されてしまう。それでも法大は21分、23番・関口正大のクロスに13番・長谷川元希が頭で合わせるが、シュートはバーを直撃。対する福岡大は集中した守備からの素早いショートカウンターや、12番・阿部海斗のロングスローから一瞬のスキを狙った攻撃を仕掛ける。34分には10番・梅田魁人がロングシュートを狙うもこれは枠を捉えきれず。38分にも6番・河原創のクロスに10番・梅田が合わせるが、これも枠には収まらず。結局スコアレスで前半を終えた。
後半になると、前回王者として負けられない法大がさらに攻勢を強める。61分には9番・松澤彰、74分には11番・橋本陸といった前線の選手を次々に投入するが、粘り強く体を張って守る福岡大のブロックを崩し切れない。82分には10番・下澤悠太がミドルシュートを放つも福岡大のGK21番・真木晃平のファインセーブに遭いゴールならず。波状攻撃を仕掛けても、福岡大のブロックに阻まれ、8番・紺野和也のドリブルもカットインができず、得意の左足を使うことができない。結局90分間ではゴールが生まれず、勝負は延長戦に持ち越された。
だが打って変わって延長戦は多くの得点が生まれる結果となった。まずは立ち上がりの92分、11番・橋本のグラウンダーのクロスに8番・紺野が合わせ、法大が先制点を挙げる。直後の96分には、8番・紺野のクロスに反応した28番・田中和樹が倒されてペナルティーキックを獲得。自ら蹴ったシュートはGK21番・真木に阻まれるも、11番・橋本がこぼれ球を押し込んで0-2とリードを広げる。しかし、福岡大もまだまだあきらめない。延長前半終了間際の104分、11番・花田佳惟斗がこぼれ球に反応して右足を振りぬくと、このシュートが鮮やかに決まり1点を返す。
しかし延長後半には法大が再び福岡大を突き放す。112分、9番・松澤が決定機を迎えるもシュートは枠外に。だがこのシュートが相手GKに当たるとそのままゴールマウスへと吸い込まれ、DFもクリアしきれずそのままゴールイン。思わぬ形で再び2点差に広げるが、120分に今度は福岡大に決定機。30番・大崎舜が法大GK12番・中野小次郎と1対1のチャンスを迎えると、思わず12番・中野がこれを倒し、福岡大がペナルティーキックを獲得。しかし、法大の12番・中野が10番・梅田のシュートをセーブし、この絶体絶命のピンチを防ぐ。福岡大は終了間際のコーナーキックにGKの21番・真木も攻撃参加。しかしクリアされたボールを法大の6番・大西遼太郎が拾い、ハーフウェイライン付近からロングシュートを放つと、これが無人のゴールに突き刺さりダメ押しの4点目が決まる。試合は1-4で終了し、前回王者の法大が、九州覇者の福岡大を下してベスト8に進出した。
法大の長山一也監督は、「福岡大の組織的な守備とゴール前でのブロックが本当に素晴らしかった」と福岡大の守備を絶賛。「福岡大の良さが出た試合だと思う」と相手の戦いぶりを称えた。ハーフタイムには、「ボールを保持しながらも狙いがはっきりしていなかったので、ポジショニングをしっかりとるように」と修正ポイントを指摘したという。もともと「初戦だから最後はPK戦になってもいいから勝とう」と伝えていたというが、「追加点は相当ばたばたしてしまった」と苦笑い。それでも「勢いのある勝ち上がりになった。トーナメントではこういう勝ち方のほうがいいかもしれない」と、この勝利を前向きにとらえていた。一方、惜敗の福岡大・乾真寛監督は「決して守備一辺倒のチームではない。ゴールを奪うという姿勢はあった」ときっぱり。「善戦を褒めるつもりない。勝つチャンスはあったのにそれを逃したのが大きかった」と悔しさをにじませた。"全国大会4強基準"のチームづくりを目指してきただけに「チームをベスト4に連れていけなかったのが残念」としながらも「法大のヤマは高かった。交代出場の5選手の総合力にやられた」と早すぎる敗退に肩を落とした。
1回戦で大勝したIPU・環太平洋大学(中国地区第1代表・7年連続7回目)と、関西リーグ王者として初戦に臨む大阪体育大学(関西地区第1代表・7年連続22回目)の一戦。
両チームともロングボール主体の攻撃を展開するが、大体大は20分、7番・西田恵からのクロスを受けた10番・林大地が右足を振り抜いて先制点をあげる。環太大も8番・山本拳志から供給される制度の高いロングボールボールでチャンスを作るものの、決定力を欠き、大体大リードで試合を折り返した。
後半は終始大体大ペースで進むが、環太大も守備陣が奮闘。60分に大体大の10番・林が右からのクロスに身が足で合わせるが、これは環太大に阻まれ、続く62分にも10番・林が同じような形でゴールを狙うものの、環太大のGK1番・上田諒がファインセーブを見せる。なかなか得点できない大体大だったが、81分についに追加点。7番・西田からのクロスを10番・林が頭で合わせ、今日2点目となるゴールを決めて環太大を突き放した。追う環太大は83分、32番・山城允輝を投入してロングボールを前線に集め、チャンスを窺う。すると86分、カウンターのチャンスから攻め上がった10番・赤木直人がペナルティーエリア内で倒され、ペナルティーキックを獲得。これを自らが決めて1点差に詰め寄るが、その後は前がかりになった環太大の隙きをついて大体大が攻める展開に。結局、環太平大は追加点を奪えず、リードを守りきった大体大が準々決勝戦へと駒を進めた。
Jリーグ内定者7名を擁する中央大学(関東地区第5代表・7年ぶり35回目)と、1回戦を3対0で快勝した仙台大学(東北地区第1代表・19年連続36回目)の一戦。
試合は序盤から、2021年浦和内定の中大8番・大久保智明と、横浜FC内定の仙台大10番・松尾佑介が攻撃で存在感を放つ展開となった。先制点は30分。甲府内定の5番・中村亮太朗からパスを受けた10番・加藤陸次樹が、左足を振り抜いて中大が先手を取る。対する仙台大は11番・岩渕弘人が前線でボールを収めるものの、味方のサポートが少なく孤立してしまう場面も。
そこで仙台大はハーフタイムにFWの9番・樋口颯太を投入。すると次第に攻撃に厚みが出始め中大を押し込み始める。70分には3番・井上友也のクロスを11番・岩渕が頭で合わせる決定機を迎える。1度はGKに弾かれるたが、そのこぼれ球を再び11番・岩渕が再び押し込み仙台大が同点に追いつく。後半は押され気味となった中大だったが、試合終盤の82分に8番・大久保のクロスを10番・加藤が押し込んで再びリードを奪う。これが決勝点となり中大が仙台大を退けた。初戦を突破した中大はベスト8進出を果たし、準々決勝で関西王者・大阪体育大学を迎え撃つ。
準々決勝は味の素フィールド西が丘で明治大学と筑波大学が対戦し、川口市青木町公園総合運動場陸上競技場にて、関西学院大学と立正大学が戦う。また、柏の葉公園総合競技場で桐蔭横浜大学と法政大学が、AGFフィールドでは中央大学と大阪体育大学の試合が行われる。
2回戦では、シード校の関東地区代表の6大学と、関西地区代表の上位2大学が登場。総理大臣杯覇者で関東王者でもある明治大学は、中京大学と対戦し3-0で完勝。盤石な強さを見せた。また、すべての試合が90分内で決した1回戦とは違い、2回戦では2試合で延長戦が行われるなど、接戦も繰り広げられた。びわこ成蹊スポーツ大学と筑波大学の一戦は、筑波大が先制するも後半終了間際にびわこ大が追いつき、延長戦にもつれ込む結果に。拮抗した展開となったが、セットプレーのチャンスを活かした筑波大が1-2で勝利を収めた。また、福岡大学と法政大学の試合は前後半ともスコアレスドローで延長戦に突入。しかし延長戦に入ると大きくスコアが動き、最終的には1-4と、法大が前回王者の意地を見せて準々決勝に勝ち進んだ。これらの結果、8試合すべてでシード校が勝ち進む結果となり、地方勢はすべて敗退。関東代表の全6チームと関西2チームがベスト8に進出した。