『2019年度 第68回全日本大学サッカー選手権大会』の決勝が12月22日(日)に行われた。
総理大臣杯、関東リーグ、そして「アミノバイタル?」カップと、大学サッカーすべてのタイトルを獲得するまであと1勝に迫った明治大学(関東地区第1代表・11年連続19回目)と、インカレ初出場での初優勝を目指す桐蔭横浜大学(関東地区第2代表・初出場)の一戦。
試合は立ち上がりから明大が試合を優位に進めた。押し込まれた桐蔭大はカウンターからチャンスをうかがい、8番・イサカゼインが明大陣内に攻め込んでシュートを放つが、これは明大のGK21番・加藤大智の好セーブに阻まれる。両チームともにサイドからの攻撃を狙うが、クロスのタイミングが合わずゴールならず。両者一歩も譲らない展開のまま、前半は0-0で終了した。
後半は明大が怒涛の攻撃で桐蔭大を圧倒する。明大は9番・安部柊斗の豪快なミドルシュート、7番・中村健人のペナルティーエリア内からのシュートなど、後半だけで計10本ものシュートを放ったが、対照的に桐蔭大は後半1本もシュートを打つことができない。しかし、桐蔭大は主将の4番・眞鍋旭輝を中止とした堅い守りと、GKの21番・早坂勇希が何度となくビッグセーブを繰り出してゴールを死守する。結局、90分では決着がつかず、試合は延長戦へともつれ込んだ。
スコアレスだった90分間とは一転し、延長戦は激しくスコアが動く展開となった。まずは 延長戦開始から2分、桐蔭大は9番・滝沢昂司が倒されてフリーキックを獲得。6番・橘田健人が蹴ったフリーキックが相手選手に当たり、そのこぼれ球を9番・滝沢が拾い、すかさずゴール前へ。すると、それを4番・眞鍋がワンタッチで押し込み、桐蔭大が先制点を挙げる。桐蔭大が耐えに耐えて得た待望の先制点。しかし、この失点が明大の関東王者として実力を呼び起こさせた。その4分後の96分、明大の8番・森下龍矢がシューをと放つが、これはポストを直撃。しかしこぼれ球に詰めた10番・小柏剛がペナルティーエリア内で倒され、明大がペナルティーキックを獲得する。キッカーは11番・佐藤亮。大会直前にけがを負い、この試合がインカレ初スタメンとなった明大の主将がこれを冷静に決め、試合を振り出しに戻した。勢いに乗った明大は98分にも、10番・小柏剛からのパスを受けた13番・蓮川壮大が抜け出して追加点。「8番・森下さんが警戒されていたので、今日はボールを運べるようなら運んでいいと言われていた」、センターバックの意表をつくゴールで、明大が逆転に成功する。明大は延長戦後半の112分にも、6番・瀬古樹の右からのクロスに8番・森下龍矢がダイレクトで合わせて勝負あり。桐蔭大の決死の守備も届かず、3-1で試合終了。明大が勝利し、10年ぶり3度目の栄冠に輝いた。
決勝戦は関東リーグ王者・明治大学と2位桐蔭横浜大学の関東対決となった。直近のリーグ戦での対戦は、2-2で引き分けるなど、桐蔭大が王者・明大を後一歩のところまで追い詰めていた。この試合でも桐蔭大は90分間明大の猛攻に耐え、延長戦で先制点をもぎとる奮闘を見せた。しかし"大学サッカー最強"の名をほしいままにしてきた明大がその実力を発揮したのは、逆境に追い込まれてからだった。間髪を入れず同点に追いつくと、立て続けに逆転ゴールを挙げ、終わってみれば3-1に。桐蔭大・安武亨監督が「試合展開はイメージしていたとおりだったが、延長戦の明大さんはそのイメージを上回っていた」と明大を評価。耐える時間が長かったとはいえ、要所要所で決定機を作り、何よりも素晴らしい守備で最後まで王者を苦しめた桐蔭大の健闘は、ファイナリストの名にふさわしいものだった。一方、これで大学サッカーのすべてのタイトル獲得した明大だが、栗田大輔監督は常に相手をリスペクトするなど、"最強"の名におごることなく本大会を戦い抜いた。記者会見では「対戦したチームには、それぞれ学ばせてもらった」と語り、選手には「常に挑戦者の気持ちで」と言い続け、最後まで集中力を維持。他チームを凌駕する圧倒的な選手層の厚さ、選手の戦術理解度の高さと柔軟な対応力、そして何より局面での競り合いの強さなど、"負けない"気持ちが王者を最後まで王者とたらしめたといえるだろう。
今シーズンの最初に、インカレの決勝戦である今日この日に、いちばん成長していようという目標を立てました。ここ数年、インカレではなかなか結果を残すことができず、選手たちも今年こそは、という想いがあったのだと思います。関東王者として臨んだこの大会では、どの大学も明治大学を倒そうと向かってきます。それを受けるのではなく、むしろ挑戦者として戦うことを徹底しました。対戦した各大学には、それぞれに学ぶべきことが多く、そのたびにチームとして成長してきたと思います。今日対戦した桐蔭横浜大学さんも、本当に強かった。最後まで素晴らしいゲームが出来て、本当に感謝しています。
明治大学さんの四冠のうち、ひとつでも阻止できればと思っていましたが、本当に明治大学さんは強かった。今日の試合はイメージ通りではあったのですが、特に同点になったからの明治大学さんは、そのイメージを完全に上回っていました。けれど、明治大学さんに引っ張られて、このような素晴らしい舞台で素晴らしいサッカーをできたことは、選手たちにとって大きな財産になったと思います。この経験を糧に、来年はまた違う桐蔭横浜大学になると思います。来年こそは、明治大学さんに勝ちたいです。
自分自身、今大会は怪我からのスタートとなりました。自分が復帰するまで頑張ると皆は言ってくれましたが、今年の明治大学のキーワードでもある“誰が出ても同じサッカーができる”ということが発揮されたことで、今大会に優勝できたと思っています。桐蔭横浜大学さんは本当に強かったけれど、大学での4年間でいちばん楽しい試合でした。どちらに転ぶかわからない状況の中でいい試合ができたこと、これは自分にとっても財産になると思いますし、楽しかったという一言に尽きると思います。明治大学は苦しい時間帯の中で何ができるかを、常に考えています。そのことが今日の勝利につながったのだと思います。
インカレ初出場ということで難しい大会になるとは思いましたが、チームがひとつになることができました。そのことが何よりも大きな財産なので、後悔はまったくありません。ただ、このチームの中心である3年生以下の選手は悔しい想いが残ったと思います。ロッカーで泣いている選手も多くいましたが、胸を張ってほしいと思います。
明治大学には周りを動かせる選手が多いので、自分は試合のテンポを常に意識していました。その中でスピードや推進力といった部分は自分の役目でもあると思っています。今日の試合では、左サイドの森下龍矢選手が相手に警戒されていたので「運べるようなら、ボールを運んでいい」とチームにも言われていていました。それがゴールに結びついたのですが、自分としてはただ得点しただけで、最優秀選手賞はチームのみんなでとった賞だと思っています。
明治大学とはリーグ戦でも2回戦っていて、どういう相手かわかっていました。明大に勝る部分があるとすれば、それは気持ちの部分だけ。リーグ戦では自分のミスで勝点を落とした試合もあります。それでも4年生が支えてくれて、自分を信じてくれる仲間がいたので、今日は全身全霊で守るだけでした。本当に気持ちの部分だけで(ファインセーブが連続するなど)当たっていたのではないかと思います。この大会に優勝し、日本一を獲ることを目標にしてきましたが、それは叶わなかった。けれど4年生や上級制のおかげでこの舞台に立てた経験は大きいと思うので、来季は頭から日本一を目標に掲げて戦いたいと思います。
瀬古(樹・4年・MF)と一緒に、相手のボランチを潰そうということは言っていました。桐蔭横浜大学にはイサカゼイン選手のようなキーマンもいますが、ボランチに厳しくいけばいい展開はされない。実際、イサカ選手が苛ついていることはピッチからもわかりましたし、中盤で競り勝って(ボールを)前に運ぶことが勝利につながったのではないかと思います。ただ、相手GKの早坂(勇希)選手がすばらしいセーブで何度も決定機を防いだので、結局延長戦までもつれこんでしまいましたが……。それでも焦ることなく「もう一度ギアを上げていこう」と言い合って、何度も何度も明大のサッカーをやり続けた。ぶれないサッカーをすることは大事だと思いました。