全国9地域・24大学が参加する大学サッカーの夏の全国大会、『2021年度第45回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント』が8月23日に開幕した。
新型コロナウイルス感染症拡大のため、昨年度大会は中止に。今年度大会は2年ぶりの開催となり、東日本国際大学(東北地区第2代表)、産業能率大学(関東地区第1代表)、山梨学院大学(関東地区第4代表)、関西福祉大学(関西地区第2代表)、東海大学熊本(九州地区第2代表)の5校が初出場。さらに東京学芸大学(関東地区第3代表)が13大会ぶりに出場するなど、フレッシュな顔ぶれがそろった。一方で、法政大学(関東地区第2代表)や大阪体育大学(関西地区第3代表)といった全国大会の常連校も健在。例年とは違う今年度大会を勝ち抜き、栄冠を手にするのはどの大学か。1回戦は16大学が、8月23日(月)と24日(火)の2日間に分かれて戦った。
全国大会初出場で、まずは初勝利を目指す関西福祉大学(関西地区第2代表)と、迫力のある攻撃を武器に1回戦突破を目指す札幌大学(北海道地区第1代表)の一戦。
開始早々に動いたのは関福大。10番・奥村仁と14番・松山匠を中心に、テンポの良いパスワークと個人技を中心に相手ゴールを脅かす。23分には、関福大の14番・松山がセンターサークル付近でパスを受け、そのままDFの背後に抜け出した11番・長井元輝に針に糸を通すかのようなスルーパスを供給。慌てて戻った札幌大DFがスライディングでクリアするが、うまく連携が取れず、クリアボールは味方GKの頭上を越えてゴールへと吸い込まれる。オウンゴールという思わぬ形で先制、全国大会初ゴールを挙げた関福大に対し、札幌大は9番・小笠原大将、11番・野瀬龍世にボールを集めて素早いショートカウンターで反撃に出るが、得点には繋がらない。すると34分、関福大に再びチャンスが到来。10番・奥村が左サイドからペナルティエリアに侵入し、シュートを放つ。一度はGKに弾かれるものの、こぼれ球に反応した11番・長井が頭で押し込み、関福大が追加点を挙げる。その後は関福大がボールを支配する展開が続き、2−0と関福大リードで前半を終える。
2点を追う札幌大は、ハーフタイムに22番・原田拓真を投入して攻撃の活性化を図る。しかし後半早々にチャンスを掴んだのはまたしても関福大。47分、ショートカウンターで11番・長井がゴール前までボールを運びシュート。これは札幌大GK、1番・國田柊平に弾かれてポストを直撃。だが跳ね返りを回収した5番・中島大雅がクロスを上げ、ゴール前に入り込んできた10番・奥村がダイレクトで合わせて3点目。さらに51分には、ペナルティエリア内で仕掛けた関福大の10番・奥村が、相手DFに倒されペナルティーキックを獲得。これを10番・奥村自身が冷静に決めて4−0に。札幌大を大きく突き放した。なんとか1点を返したい札幌大は、11番・野瀬と後半から入った22番・原田で右サイドの攻略を図るが、関福大の集中した守備に阻まれてゴールに結びつかない。試合は4−0で終了し、初出場の関福大が2回戦へと駒を進めた。
関東地区予選の『「アミノバイタル®」カップ』で都県リーグ所属ながら1部、2部チームを倒す快進撃をみせ、満を持して全国大会に臨む山梨学院大学(関東地区第4代表)と、『関西学生サッカー選手権大会』の準々決勝では劇的な逆転勝利で出場権を掴んだびわこ成蹊スポーツ大学(関西地区第4代表)の一戦。
試合は、立ち上がりから両チームとも細かくパスをつなぎ、攻撃のリズムを作る。序盤は拮抗した展開となったが、徐々にペースを掴んできたのは山学大。中盤でパスを回すと、びわこ大ディフェンスラインの一瞬の隙をついてチャンスをうかがう。16分にコーナーキックを獲得した山学大は、長身のセンターバック、3番・フォファナマリックを前線に。するとこの戦術がピタリと的中。10番・若谷拓海が蹴ったボールに、3番・フォファナが頭で合わせ、山学大が先制する。さらに19分、6番・平田和也がびわこ大DFのクリアボールを拾い、前線の10番・若谷に縦パス。これが相手DFの裏に抜け出した14番・平河悠にわたり、びわこ大GK1番・原田圭吾と一対一に。GKを冷静にかわした14番・平河が無人のゴールへとシュートを流し込み、山学大が2-0とリードを広げる。その後は山学大が3番・フォファナを中心にびわこ大の攻撃を封じ、2-0のまま前半が終了した。
後半に入ると、今度はびわこ大が徐々にギアをあげる。53分、びわこ大は山学大の一瞬の隙をついて、25番・川﨑章弘が9番・清水一雅に鋭いパスを送る。これをダイレクトで落とすと、最後は7番・工藤真人がワンタッチでゴール右上に突き刺し、びわこ大が1点を返す。追いつきたいびわこ大は、続いて攻撃を仕掛けるが、山学大の集中した守備に阻まれて追加点を挙げられない。結局、その後は両チーム得点がないまま試合が終了。『「アミノバイタル®」カップ』から快進撃を続ける全国大会初出場・山学大が、関西の雄を退けて2回戦に駒を進めた。
2010年度以来となる優勝を目指す駒澤大学(関東地区第6代表)と、悲願の初優勝を目指す新潟医療福祉大学(北信越地区第1代表)の一戦。
試合は前半開始早々に動いた。2分、新福大の3番・沼田皇海のフリーキックを15番・田中翔太が頭で突き刺し、幸先の良い先制点を挙げる。出鼻を挫かれた形となった駒大は、サガン鳥栖内定の7番・荒木駿太が積極的にシュートを放つが、新福大GK12番・三文字瑠衣のファインセーブに防がれて得点には至らず。それでも駒大が徐々にペースをつかみ、チャンスを作り始めたかに思われた31分、新福大がフリーキックを獲得。3番・沼田のキックに、13番・オナイウ情滋が右サイドの裏に抜け出してクロスを上げると、最後は9番・小森飛絢が右足で流し込んで追加点。前半は0-2と、新福大のリードで終わった。
後半は、2点を追う駒大が積極的に攻撃をしかけ、新福大がカウンターを狙う展開となった。駒大は9番・宮崎鴻や途中出場の15番・米谷拓海がシュートを放つものの、新福大もGK12番・三文字を中心とした身体を張った守備で、なかなかゴールを割らせない。後半、新福大のシュートはわずかに1本。対する駒大は8本と圧倒的な攻撃で新福大ゴールに襲いかかったが、最後までゴールネットを揺らすことができず、0-2で試合終了。全国大会常連の駒大が、まさかの1回戦敗退となった。数少ないチャンスを確実に仕留めた新福大は、2回戦に進出。前回大会、そして昨年度全国大会での初戦敗退の雪辱を果たした。
10大会ぶりの優勝を目指し初戦に勝利して勢いに乗りたい大阪体育大学(関西地区第3代表)と、四国勢・国立大学の意地を見せ初戦に勝利したい高知大学(四国地区1代表)の一戦。
試合は序盤から激しい攻防戦が繰り広げられた。両チーム前線から激しいプレスをかけ、相手に思うようにボールを回させない。だが8分、大体大は前線から圧力をかけて、18番・瀬尾純基がスライディングでボールを奪取。そのままドリブルからクロスを上げると、ニアサイドに飛び込んできた9番・髙橋一輝が強烈なヘディングシュートをゴールに突き刺す。前線でのハイプレスを起点に攻撃を仕掛けた大体大が、貴重な先制点を挙げる。一方、早い時間に失点を許した高知大も、その後は粘り強い守備からのカウンターで得点機会をうかがう。44分には相手のプレスをかいくぐると、落ち着いたボール回しで相手DFを引き出す。すると2番・木下紘希が、空いたスペースに走りこんできた17番・丸木康聖へとスルーパス。17番・丸木がダイレクトでアーリークロスを上げ、ファーサイドに走りこんだ7番・秋山大輔がシュートを放つ決定的なチャンス。しかしシュートは枠の外へ。高知大はチャンスをものにできず、大体大が1点リードのまま前半は終了する。
後半は開始から大体大がボールを支配する展開となった。50分には7番・横山翔大が10番・野寄和哉からのパスをペナルティエリアの角で受け、チップキックでクロスをあげる。それをゴール前に走りこんできた18番・瀬尾がゴールに押し込み、大体大が2-0とリードを広げる。その後も大体大がペースをつかみ、鋭い攻撃で高知大ゴールを脅かす。74分には、ハーフウェーライン手前でボールを奪った7番・横山が、細かいタッチと素早いドリブルで高知大の守備陣を切り裂く。そのまま自らゴール前までボールを運び、最後は豪快なシュートを突き刺す。大体大は7番・横山の個人技で3点目を奪い、勝利を手繰り寄せる。対する高知大は、大体大の堅い守備の前に得点することができず、3-0で試合終了。
両チームともに交代カードを全て使い果たす総力戦となったが、大体大が高知大にゴールを許さず、3点のリードを守って初戦を突破した。対する高知大は最後まで一丸となって戦うもののゴールは遠く1回戦敗戦となった。
初出場の総理大臣杯で初勝利を掴みたい東海大学熊本(九州地区第2代表)と、創部初となる2回戦突破を目指しまずは初戦に勝利したいIPU・環太平洋大学(中国地区第1代表)の一戦。
試合は序盤から環太大が主導権を握る展開となった。20分、左サイドから18番・仲里光貴がゴール前にクロスをあげ、16番・永尾成悟がヘディングシュートを放つが、これは惜しくもゴールならず。対する東海大熊本もチャンスを増やし、30分にゴール前のこぼれ球に反応した6番・松永浩誉が鋭いシュート。しかしこちらも得点には至らない。東海大熊本は33分にも10番・石見和偉が決定的なシュートを放つが、環太大のGK、12番・轟大和がビッグセーブをみせ、スコアレスで前半が終了する。
後半に入ると、開始早々に環太大が決定機を迎える。48分、ハーフタイムに投入の9番・山内大河がペナルティエリア内で仕掛けるが、シュートは右ポストを直撃。その後も攻め続ける環太大は67分、クリアボールのこぼれ球を10番・恩塚幸之介がペナルティエリア手前で拾い、ゴール前にパスを送る。すると9番・山内がワンタッチシュートでゴールネットを揺らし、環太大が待望の先制点を獲得する。東海大熊本も追いつくべく前からのプレスを続けるが、環太大の堅い守備を崩せず、試合はそのまま終了。1点を守りきった環太大が2回戦進出を決めた。
地方勢の雄同士の対戦。3大会連続の杯出場で、今大会での躍進を狙う日本文理大学(九州地区第3代表)と、全国の舞台でさらなる飛躍を誓う静岡産業大学(東海地区第2代表)と一戦。
試合は両者ともにサイドからの攻撃を中心に相手ゴールを狙う展開となった。静産大は左サイドの14番・東山達稀のドリブル突破からチャンスを演出。文理大も左サイドの11番・立岩玄輝が積極的にシュートを放ってチャンスを創出する。すると37分、文理大は11番・立岩が左サイドで相手を引きつけ、27番・岡野凜平にパス。27番・岡野がクロスを供給すると、中央で7番・後藤文太が頭で合わせ、文理大が先制する。一方、静産大も前半終了間際に好機。45分、5番・鈴木凱人のフィードに反応した11番・早川諒祐が、ダイレクトに右足でシュート。しかし、これは文理大GK、21番・清水羅偉の好セーブに阻まれてゴールとはならず。文理大が1点リードで前半を終えた。
後半も一進一退の攻防が続くが、次の1点を決めたのは文理大だった。62分、文理大は敵陣中央で直接フリーキックを獲得。先制点をアシストした27番・岡野のキックを、DFのマークを振り切った9番・高昇辰が滑り込みながら右足で合わせて追加点。文理大が2-0とリードを広げた。追う静産大は攻勢を強めるものの、文理大ディフェンス陣の体を張った守備に阻まれ、得点ができないまま試合は終盤へ。文理大は終了間際の90分、コーナーキックを獲得。29番・元田陸が左から蹴り入れたキックに、3番・武藤圭亮がニアサイドから気迫のこもったダイビングヘッドで飛び込んでゴール。1点差に迫った静産大は、アディショナルタイムに同点弾を狙うも反撃はここまで。両チーム足が攣る選手が出るほどの激闘は、チャンスを逃さず確実にゴールを決めた文理大が、2-1で勝利。2回戦進出を決めた。
13大会ぶりの総理大臣杯出場となる東京学芸大学(関東地区第3代表)と、こちらは2大会ぶり2回目の出場となる松本大学(北信越第2代表)。フレッシュな出場校同士の対戦。
序盤は東学大がボールを保持してゲームを作ろうとする一方、松本大も果敢にハイプレスを仕掛け、両者一歩も譲らぬ激しい攻防戦となった。14分、東学大は立て続けにコーナーキックのチャンスを得るが、松本大はGK12番・小澤恒輝を始めとする体を張った守備でゴールを死守。ピンチを凌いだ松本大は17分、9番・青木安里磨のシュートなどで東学大ゴールを脅かすが、前半のシュートはこの1本に留まることとなった。その後は東学大がペースを握るが、なかなか得点には至らない。このまま前半が終了するかと思われた44分、東学大は細かいパスで右サイドを突破。抜け出した10番・鈴木魁人からのクロスを、11番・河田稜太が巧みなトラップから2タッチで素早くゴールへと流しこむ。前半終了間際に東学大が先制し、1-0のまま前半を終えた。
後半は松本大が立ち上がり、リズミカルな攻撃で東学大ゴールを狙う。松本大は10番・濱名真央が遠目からのフリーキックで直接ゴールを狙うが、東学大GKの1番・栗原功太郎がファインセーブ。拮抗した展開はしかし79分、ついに動きを見せる。東学大は7番・住田将のコーナーキックから4番・上加世田達也がマークを振り切り、直接頭で叩き込んで追加点。松本大を突き放す2点目を挙げる。さらには終了間際の90分、意表を突いたフリーキックで11番・河田のゴロパスから、7番・住田が反転しながらシュート。これがそのままゴールに吸い込まれ、東学大がダメ押しの3点目を決めて勝負あり。7番・住田、11番・河田がそれぞれ1ゴール1アシストずつと躍動した東学大が、3-0で快勝を収めた。
2回戦にコマを進めた東学大の次戦の相手は、富士大学の出場辞退により急遽出場となった筑波大学。関東勢の対決、そして国立大学同士ともに負けられない一戦となるだろう。
創部以来初となる全国大会に臨む東日本国際大学(東北地区第2代表)と、6大会連続出場中の常連校としてまずは確実に1回戦を突破したい中京大学(東海地区第3代表)の一戦。
試合は開始早々の3分に動いた。中京大は相手陣地の中央付近で細かくパスを回して東日本大の中盤を崩すと、12番・秀島悠太からペナルティエリア内の11番・山田晋平へ浮き球のパスが通ると、走りこんできた25番・有働夢叶へと繋ぐ。25番・有働は相手DFをかわ、ゴール右隅へと見事なシュートを決めて中京大が先制する。そして、ここから中京大が怒涛のゴールラッシュ。先制から1分後の4分に7番・名執龍、8分に21番・進藤克樹、13分、12番・秀島悠太が次々とゴールを重ね、あっという間に4-0に。長身揃いのFW陣が圧倒的な得点力を見せ、15分までに中京大がリードを4点差に広げる。しかし中京大の猛攻は留まるところを知らない。32分、ピッチ中央でボールを奪うとショートカウンターを展開。13番・藤光翔のスルーパスに11番・山田が抜け出し、相手GKとの一対一を冷静に決めて5点目をマーク。さらに37分、11番・山田が連続ゴールで6点目。40分には、12番・秀島がこの日2点目となるゴールを決め、7-0リードと圧倒的な展開で前半を終えた。
後半に入っても中京大が相手陣地でプレーする時間が続いた。一方、これ以上の失点は許されない東日大は、ゴール前で必死の守備で対応。しかし、またもや中京大が試合を動かす。79分、26番・美濃祥真が高い位置でボールを奪うと、途中出場の33番・永井友也にボールを送る。ペナルティエリア内でボールを受けた33番・永井がこれを冷静に流し込み、ついに8点目。さらに88分、コーナーキックから5番・水口湧斗が頭で合わせ9-0。中京大は最後まで攻撃の手を緩めることなく、終了間際の90分にも、26番・美濃がダメ押しゴールを決め、結局10-0でタイムアップとなった。
合計26本のシュートを放ち、相手シュートを前半の1本に抑えた中京大が終始試合を支配し、2回戦に進出。初出場の東日大にとっては、厳しい“全国の洗礼"を浴びる形となった。
この結果、北海道、四国の各地域代表の敗退が決定。初出場チームは明暗が分かれ、関西福祉大学、山梨学院大学が2回戦へ駒を進めた一方、東海大学熊本、東日本国際大学は初戦敗退となった。2回戦からは一昨年準優勝校の法政大学をはじめ、関東、関西、東海地区のシードが登場し、熱い戦いが期待される。