JUFA 全日本大学サッカー連盟

総理大臣杯
『2024年度 第48回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』決勝マッチレポート
2024/09/16


 夏の大学日本一を決める全国大会『2024度 第48回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント』の最後の一戦、阪南大学(関西地区第6代表)と新潟医療福祉大学(北信越地区第1代表)の試合が、9月15日(日)にいわぎんスタジアムAで行われた。


決勝 全結果・トーナメント表







阪南大学 2(1-1)1 新潟医療福祉大学 @いわぎんスタジアムA


 阪南大学が総理大臣杯の決勝のピッチに立つのは2012年以来。新潟医療福祉大学は自身としても北信越勢としても初の決勝進出。決勝では初の対戦カードとなるこの一戦は、開始早々にスコアが動いた。

 まさに電光石火。先制点が決まったのはキックオフからわずか15秒だった。新医大はキックオフボールをGKの桃井玲に戻すと、受けた桃井は右サイドにロングキックを展開。新医大は阪南大と競り合いながらも上之平暉羅、吉田晃盛、松本天夢とつなぎ、吉田がペナルティーエリア内で右足の強烈なシュートを放つ。これは阪南大GK・市川泰壱が手に当てて防ぐものの、こぼれたボールを田澤夢積が押し込んで新医大が先制。だが、阪南大もすぐに反撃に移る。失点直後の3分には、コーナーキックからのボールを金本毅騎がキープ。ゴール前にクロスを入れると、池田陸が頭で落とし、バウンドしたボールを中田有祐が頭で合わせて同点弾。開始から3分の間に両チームが1点ずつを入れて試合を振り出しに戻した。



 「失点には自分も関わっているので申し訳ない気持ちもあったが、悲観的になりすぎてはいけないと思っていたところで、すぐ中田が点を取ってくれた。その後は、正直いけるという感じはあった」(阪南大・野瀬翔也)

 その言葉どおり追いついてからは阪南大が試合の主導権を握り、何度となく新医大ゴールを脅かす。だが、どうしても追加点を挙げることができない。30分過ぎ、飲水タイムを挟むと「あまりにも失点が早すぎた」(新医大・佐熊裕和監督)という新医大が少しずつ落ち着きを取り戻し、試合は一進一退の攻防戦に。結局、どちらも追加点のないまま前半を終了した。

 1-1で迎えた後半の立ち上がりは新医大に立て続けにチャンスを作る。48分、松本のマイナスのパスを受けた田澤が決定的なシュートを放つが、これはポストを直撃。その跳ね返りを再び田澤が蹴り込むがシュートは枠の外に。対する阪南大は55分に松井匠、小川麟のふたりを一気に投入して試合の流れをつかもうとするが、主導権を握るまでには至らない。新医大は58分、GK桃井が相手ペナルティーエリアまで届くロングキックを放ち、これに吉田が反応。しかし放ったシュートはバーの上に。「(松本)天夢と高足)龍を少し高めに置きながら、吉田(晃盛)のこぼれ球を前がかりで食いつかせられればチャンスにはなってくるとは思っていた」(佐熊監督)という狙いどおりの展開が続いたが「決めきれなかったことが残念」。対する阪南大は中田にボールを集めるものの決めきれず「難しい時間が続いた」(野瀬)。

 試合は1-1のままアディショナルタイムに突入。すると阪南大は金本がペナルティーやや右下で倒されてフリーキックを獲得する。90+4分、櫻井文陽がゴール前に蹴り入れたボールを金子光汰が左足で押し込んでネットを揺らし、阪南大が土壇場で逆転に成功。「最初その位置的にファーからの折り返しで中田に行ってもらおうと思っていた」というが「 試合中に野瀬と中田がマークされていたので、自分のマークのほうが軽いか、と。それでニアに早いボールを流してもらって、自分が合わせようと思った」(阪南大・金子)。ほどなく試合終了の笛が鳴り、金子のこのゴールが決勝点となって阪南大が2-1で勝利。11大会ぶり3回目となる優勝を果たした。



 新医大の佐熊監督は「決めるべきところを逃せばこうなるという、典型的な試合」とひと言。後半からは試合の流れを掴み、少なくないチャンスを得ていただけに課題も残る結果となった。しかし「いくつかのピンチは体を張ってきちっと防げた。彼らが頑張ってくれたところだと思うし、次につながるゲームができた」との評価も。2年前のインカレと同じ準優勝の結果に終わったが「チーム全体でハードワークして、というところは全国でも十分に通用する。あとは日頃の練習から(プレーの)精度を上げることを意識して冬のインカレに臨みたい」と"3度目の正直"による全国優勝を目指す。

 劇的な逆転優勝を果たした阪南大だが、主将の野瀬は得点シーンのギリギリまで「延長戦は意識していなかった」という。「これまでもギリギリのところで点を取って勝てた試合が結構あった。だから(金本が)ファウルになった瞬間、これはワンチャンいけるぞ、との直感があった」。11大会・12年前の優勝時のチームは、本多勇喜(神戸)、泉澤仁(大宮)らJ内定者を多く擁し、リーグ戦でも優勝を果たしている。対して今大会のチームはJ内定者ゼロ、本大会の地域予選も最後のひと枠に滑り込んだ状態。かつてのチームに比べると華々しさはないが、5試合中3試合で逆転勝利を収めるなど、最後まで諦めない粘り強さが際立っていた。この試合も後半は新医大の勢いに苦戦が続く時間帯もあったが「最後はチーム力とか、そういうところで勝てたと思う」という野瀬の言葉は、チームへの絶対的な信頼に満ちあふれていた。