『平成29年度 第66回全日本大学サッカー選手権大会』2回戦マッチレポート
2017/12/20
12月16日(土)、大学サッカーの頂点を決める大会、『平成29年度 第66回全日本大学サッカー選手権大会』(インカレ)の2回戦が行われた。2回戦からはシード枠の8チームが登場し、1回戦を勝ち抜いた8チームとベスト8を懸けて熱戦が繰り広げられた。
◯昨年度王者として連覇を狙う、筑波大学(関東地域第1代表)と、今夏の総理大臣杯でベスト8入りをして自信をつけた常葉大学浜松キャンパス(東海地域第3代表)との一戦。
試合は序盤から筑波大がペースを握った。筑波大はボランチの6番・鈴木徳真と27番・渡邊陽を軸に、ポゼッションをしながらゴールを目指す。すると20分、ゴール前中央をパスで崩すと、最後はキャプテンの10番・北川柊斗が右足で決めて筑波大が先制する。常葉大も奪ったボールを9番・濱田駿をターゲットにしてシンプルに攻めるが、シュートまで持ち込むことが出来ない。常葉大の前半のシュートはわずか1本。結局、0?1とリードされたまま前半を終える。
後半も流れは変わらず筑波大。しかし常葉大の粘り強い守備を崩し切れず、決定機を作れない。スコアが動かないまま後半も半ばをすぎると、両チームともに積極的にフレッシュな選手をピッチに送り出して流れを変えようと試みる。筑波大はこの選手交代が的中。81分、右サイドバックの3番・小笠原佳祐の速いキックを25番・西澤健太がつないで相手に揺さぶりをかけると、65分に投入された8番・戸嶋祥郎がフリーでボールを受け、ゴールへと流し込んだ。一方の常葉大もその1分後、ゴールから500mほど離れた位置から、フリーでボールを受けた10番・土井智之が右足を振り抜き、鮮やかなロングシュートを決めてその差を1点に詰める。このゴールで流れを手繰り寄せた常葉大は、残り10分間で同点ゴールを狙うが、守りを固めた筑波大のゴールをこじ開けられずタイムアップ。筑波大が1点差で逃げ切り、ベスト8進出を決めた。
◯初出場ながら初戦に快勝し、準々決勝進出を狙う東京国際大学(関東地域第6代表)と、前回大会ではベスト4の阪南大学(関西地域第3代表)の一戦。
試合は序盤から両大学が積極的に攻め合う展開となった。初戦からメンバーを変えずに臨んだ東国大は、積極的に19番・町田ブライトの裏のスペースを使い、ゴールを狙う。得点が動いたのは開始わずか6分だった。10番・安東輝の蹴ったコーナーキックは一度阪南大GK21番・渡邉健太郎が弾いたものの、そのこぼれ球を5番・楠本卓海が右足で突き刺し、東国大が先制点を挙げる。続く19分には、ゴール前でのパス交換を阪南大DFがカットするも、そのこぼれ球を拾った23番・條洋介が豪快なミドルシュートを決め、東国大が2-0で試合を折り返す。
後半に入っても東国大の勢いは止まらない。61分、東国大は21番・古島圭人のゴールキックを11番・進昴平が頭で落とすと、19番・町田が1人でドリブルで持ち込みゴール前へ。そして阪南大GK21番・渡邉をかわしてゴールへと流し込み、3点目を挙げる。しかし東国大はその1分後の62分、交代出場のDF、24番・高橋和洋がこの日2枚目の警告を受けて退場となってしまう。3点のビハインドを負う阪南大だったが、この退場で数的優位に立つと一気に攻撃のギアを上げる。78分、10番・山口一真からパスを受けた12番・岡部拓実が放ったシュートはポストを直撃するが、この跳ね返りを自身で押し込み1点を返す。猛攻を仕掛ける阪南大に対して、東国大はGKの21番・古島がファインセーブを連発。集中を切らさずに守りを固めるが、試合終了間際の90+1分についに失点。阪南大GK、21番・渡邉のパントキックを東国大DFが一度は跳ね返したが、それを拾った12番・岡部が8番・重廣卓也へとボールを展開。8番・重廣が角度のない位置から流し込み2点目をマーク。スコアを3-2とする。1点差まで詰め寄った阪南大だったが、反撃虚しくほどなくタイムアップ。東国大が辛うじて1点差を守りきり、準々決勝へと駒を進めた。次戦、東国大は同じ関東代表で前年度王者の筑波大学と対戦。しかし19番・町田が累積警告で出場停止という厳しい状況だ。
◯1回戦で延長戦の末インカレ初勝利を挙げたIPU・環太平洋大学(中国地域第1代表)と、2年ぶり11回目のインカレ出場となる流通経済大学(関東地区第3代表)の一戦。
試合は、開始直後から流経大が攻める展開となった。流経大は10番・ジャーメイン良の放ったシュートがバーに直撃。また環太大GK31番・宮野光雄のビッグセーブもあり、なかなかチャンスをものにすることができない。一方、環太大もほとんどシュートまで持ち込むことができず、両チーム無得点のまま前半を終える。
試合が動いたのは70分だった。右サイドの7番・新垣貴之から横パスを受けた6番・石田和希が5番・守田英正へとボールを展開。11番・渡邉新太の突破につられた環太大DFの裏をついて、ゴール前にパスを通すと、30番・星野秀平が上手く相手をかわして右足でシュートを放つ。流経大が得意のパスワークで環太大の守りを破り先制点を挙げる。環太大も反撃に出るが、終始流経大が主導権を握る展開に攻めきれず、そのまま試合終了。0-1で流経大が初戦を突破した。
○まずは初戦を勝ち抜きたい大阪体育大学(関西地区第2代表)と、関西、関東地区以外では唯一の生き残りとなった福岡大学(九州地区第1代表)の戦い。
前半は一進一退の攻防が続いたが、22分に福岡大がペナルティーキックを獲得。これを14番・山下敬大が落ち着いて決め、福岡大が先制点を挙げ前半が終了する。
後半に入ると大体大は前線にボールを入れ、シンプルな攻撃でゲームを組み立て始める。一方の福岡大は、ショートカウンターでこれに対応。拮抗し展開が続く中、試合が動いたのは58分だった。ユニバーシアード代表で大体大の守備の要である、センターバックの4番・菊池流帆が負傷交代。するとその直後に、福岡大は7番・中村太一が最終ラインの左から前線へとロングボールを放つと、交代したばかりの10番・梅田魁人がヘディングで流し、最後は12番・井上健太が豪快なダイレクトシュートを決めて追加点。リードを2点差に広げる。大体大も78分、ゴール前での混戦からこぼれ球を14番・田中駿汰が決めて1点差とするが、反撃もここまで。両チームその後の追加点はなく、1-2で試合が終了。福岡大がシード校の大体大に勝ち、準々決勝で流通経済大学と対戦することとなった。
〇4年連続22回目のインカレ出場で、2回戦からの登場となった順天堂大学(関東地区第2代表)と、1回戦を接戦で制した九州産業大学(九州地区第3代表)の一戦。
九産大のキックオフで始まった試合は、いきなり動きを見せた。開始早々の2分、九産大はゴールに近い左サイドのエリアでファウルを受けてフリーキックを獲得すると、14番・末永巧が右足で直接ゴールに蹴りこみ、九産大が早い時間帯で先制点を得る。開始直後からビハインドを追う立場となった順大だったが、5分には、4番・坂圭祐からのロングキックが6番・石上輝につながり、そこから上げられたクロスに13番・浮田健誠が左足で合わせてゴール。すぐさま順大が同点に追いついた。振り出しに戻ったゲームはその後完全に順大ペースに。34分には右サイドバックの24番・鈴木啓太郎のクロスに飛び込んだ、7番・名古新太郎のダイビングヘッドが決まって逆転に成功。順大が2-1でリードしたまま前半を終えた。
後半も順大が優位にゲームを進める展開となり、九産大は自陣に守りを固めてカウンターからの得点を狙う。しかし主将の4番・坂を中心とした順大の堅い守りを攻略することができず、得点はおろかシュートにも結びつけることができない。すると55分、順大は13番・浮田が14番・杉田真彦から受けたボールをシュート。これは九産大DFに弾かれたものの、クリアボールを14番・杉田が拾い、落ちついてゴールに流し込んで追加点。3-1と九産大を突き放す。さらに61分、順大は14番・杉田がこの日2ゴール目となる得点を決め、ダメ押しの4点目。先制点こそ奪われたものの、終始順大が試合のペースを握り4-1で終了。順大が盤石な試合運びで大勝した。
順大の堀池巧監督は「相手は3バックといいながら、5バックにもなるだろうから、前向きにアーリークロスを入れよう、対角の背後をとって裏を使おうと伝えた」と狙いを語ったが、同点に追いついた1点目、そして勝ち越し点となった2点目はまさに狙いどおりの得点パータン。「早く追いつけたのは大きかった。ずいぶん楽になったと思う」と笑顔を見せた。次戦の対戦相手は、関西第4代表の関西大学。東西対決となるだけに、関東のチームの意地を見せたいところだ。
◯劇的な勝利で勝ち上がった関西大学(関西地区第4代表)と、9年連続17回目の出場となる明治大学(関東地区第4代表)の一戦。
明大のキックオフで始まった試合は、序盤から明大ペースで進んだが、関西大も縦に速い攻撃を仕掛けて明大のゴールに迫る。テンポの速いパスワークとサイドからの仕掛けで、両チーム見応えのある試合展開となったが、38分に関西大の9番・加賀山泰毅が明大DFのハンドを誘い、ペナルティーキックを獲得。これを9番・加賀山自身が冷静に左スミにシュートを決め、関西大が先制して前半が終了する。
後半は、何とか同点に追いつきたい明大が関西大ゴールに迫るも、関西大の粘り強い守備でシュートまで持ち込ませない。明大はシステムを3?4?3に変更し、積極的にロングボールを前線に入れ始める。さらにパワープレーでゴールを狙うべく、ヘディングを得意とする13番・岸本英陣を投入。それでも関西大は、放り込まれたボールをしっかりと跳ね返し、先制点を死守。結局、関西大が1点を守りきって試合が終了した
厳しい試合を堅固な守備で勝ち抜いた関西大の前田雅文監督は「(17番の)竹下(玲王)が中心となって、前からプレスをして相手の長いボールを詰めていくというのはプランどおり」と試合を振り返った。「ウチは2点も3点も取れるチームではない」と割り切って「後ろでしっかり守ってワンチャンスを狙った」とも。とはいえ関東でも屈指のハイプレスをかける明大相手に真正面からぶつかっただけに「これだけ明大さんに消耗させられたのは相当しんどい」と苦笑い。「ほかのメンバーが活躍してくれないことには、残りの3試合を勝てないだろう」と結んだ。次戦は、関東第2代表の順天堂大学。関東でも屈指の攻撃力を誇るチームに、明大を完封した守備力で対抗したい。
○初戦突破の勢いで連勝したい鹿屋体育大学(九州地区第2代表)と、3年ぶり3回目の出場となる関西の王者、びわこ成蹊スポーツ大学(関西地区第1代表)の戦い。
立ち上がりから堅い守備でゴールを守る両チーム。鹿体大は、10番・松田天馬、8番・樋口雄太、11番・向高怜を中心に攻撃を組み立て攻めるが、なかなかシュートまで持ち込むことができない。スコアを先に動かしたのはびわこ大だった。44分、びわこ大はコーナーキックを18番・井上直輝が後ろにそらし、それを27番・大西裕斗がシュート。一度は相手ディフェンスにブロックされたものの、もう一度シュートを放ちびわこ大が先制点を挙げる。
後半は両チームともに、サイド攻撃やカウンターで攻めるも、なかなか試合は動かない。鹿屋大は後半シュートゼロと決定機をつくれず、一方のびわこ大も攻めながらもゴールを決められずに、追加点のないまま試合終了。先制点を守りきった関西チャンピオンのびわこ大が、鹿屋大を下してベスト8に名乗りを挙げた。
○夏の総理大臣杯の覇者として、夏冬2冠を目指す法政大学(関東第5代表)と、1回戦では延長戦までもつれ込む激闘を制した静岡産業大学(東海地区第1代表)の一戦。
静産大キックオフで始まった一戦は前半序盤から法大がボールを回しペースを握った。前半の28分、法大は左サイドで11番・青柳燎太と29番・森俊貴の2人がパスワークで相手の守備を崩して抜け出すと、11番・青柳がそのままゴールを決めて法大が先制する。さらに36分、法大は左サイドでフリーキックを獲得。キッカーの9番・森が蹴り込んだボールは相手にクリアされるものの、こぼれ球を拾った11番・青柳が左足で決めて、リードを2点に広げた。
追いつきたい静産大は59分、21番・栗田マークを投入。するとカウンターから9番・遠山拓民のアーリークロスに、21番・栗田がダイビングヘッドで飛び込むが、これは法大GK、1番・関口亮助のファインセーブに阻まれる。この決定機を決め切れなかった静産大はその後チャンスらしいチャンスを作れず、ない逆に85分、コーナーキックから法大の18番・松澤彰に頭で合わせられダメ押しの3点目を喫してしまう。試合はそのままタイムアップとなり、3-0で法大が勝利を収めた。
各会場で8大学が激戦を制してベスト8が出揃った。準々決勝は12月18日(月)に行われ、柏の葉公園総合競技場では関東地区第1代表・筑波大学と関東地区第6代表・東京国際大学、九州地区第1代表・福岡大学と関東地区第3代表・流通経済大学の2試合が開催。栃木市総合運動公園陸上競技場では関西地区第1代表・びわこ成蹊スポーツ大学と総理大臣杯優勝/関東地区第5代表・法政大学との試合が、浦安市運動公園陸上競技場では関東地区第2代表・順天堂大学と関西地区第4代表・関西大学との1試合が行われる。
明治大学と阪南大学というシード2校が敗れ、準々決勝へは関東5チーム、関西2チーム、九州1チームが駒を進める形となった。ますます緊張感が増す本大会。熾烈な戦いを勝ち抜き、準決勝へと勝ち進むのはどのチームか。