2004年にスタートし、今年で16回目を迎える『DENSO CUP SOCCER 大学日韓(韓日)定期戦』。日本と韓国で交互に開催されているこの定期戦は、第1回以来ずっと"ホームチームが負けない"という結果が続いている。これまでの戦績は7勝6敗2分で、今年はホーム開催となる全韓國大學選抜にとっては絶対に負けられない試合。そして全日本大学選抜は今回こそは初のアウェー勝利を目指すべく韓国に乗り込んだ。
全日本大学選抜の中で、昨年度の日本開催の“日韓戦”を経験しているのは10番・旗手怜央と14番・紺野和也と1番・オビパウエルオビンナのわずかに3人のみ。実際に試合に出たのは旗手と紺野、スタメンは旗手ひとりと、まさに“一新”という言葉がふさわしいチームで試合に臨んだ。10分に右サイドの紺野が切れ味鋭いドリブルでボールを運ぶと、前線にスルーパスを送る。「前半のはじめのほうだったので、(紺野)和也がボールを持ったら相手の裏を狙おうと思っていた」という旗手がこれに反応。GKとの1対1を制すると、シュートをニアに突き刺した。
幸先のいいスタートを切った全日本大学選抜は、その後も右サイドの紺野を中心にチャンスを演出。韓國は紺野のドリブルを止めることができず、全日本大学選抜のペースとなるが、ゴールを決めきることができない。逆に、局面での競り合いからボールを奪われる回数が増え、韓國の186センチの長身FW、18番・イ・グンヘにボールをがわたるシーンも。
「平均身長は韓國のほうが上。セカンドボールで勝負していても分が悪い。どこかでボールを落ち着かせて、つなぎたかった」(松本直也監督)が、落ち着かせどころを見つけられないまま、試合の流れは次第に韓國へ。
42分には相手にFKを与え、その流れからCKへ。この左からのCKを、キン・インギュンが頭で押し込み、ついに失点。同点に追いつかれ、試合は振り出しに戻ってしまった。
後半開始早々には韓國の10番・キムホがフリーで抜け出し決定的なシーンをつくるが、これは6番・本村武揚がクリアー。その後も、相手陣内でプレーされる時間帯が長くなったが、GKオビ、センターバックの本村を中心としたディフェンスラインが奮闘し、試合は膠着状態に。すると全日本は55分、FWの23番林大地に代えて11番・上田綺世を投入。U-22代表のエース投入で形勢逆転を狙い、72分にはこの上田の突破からボランチの24番・河原創がミドルシュートを狙うがシュートは枠の上に。
全日本はさらに73分、17番・森下龍矢を下げて13番・金子拓郎をピッチに送り出す。右サイドに入った金子は、出場早々にドリブルで攻撃を仕掛けると、これに旗手、紺野、上田ら前線の選手が反応。「勝負どころで出すと言っていた」(松本監督)というふたりの投入で、全日本の前線が活気づくがゴールまではあと一歩及ばず。逆に78分には韓國の17番・キム・ヒョンウォにカウンターを許し、80分には16番・ジャン・ジャオンにフリーでシュートを打たせるなど、安易なミスからピンチを招くシーンが目立った。
全日本も82分に紺野のクロスに上田がダイレクトで合わせる決定的なシーンを迎えるが、惜しくもシュートはバーの上。結局、両チーム決定機を決めきれないまま、試合は15分ハーフの延長戦に突入した。
全日本は後半終了間際に7番・イサカゼイン、延長開始時に8番・橘田健人を投入。104分にはペナルティエリアに侵入した左サイドバックの3番・山原怜音が相手DFに倒されるが、主審の笛は鳴らず。逆に延長後半開始直後の107分、交代出場したばかりの2番・高木友也が韓國の9番・ジュン・サンウォックを倒してしまい、フリーキックを献上。
ペナルティエリアやや右前、好位置からのフリーキックを、13番・キム・ミンジュンが直接ゴール左隅に決めて韓國が2-1と逆転に成功。全日本はその後、怪我のため出場時間に制限のあった20番・児玉駿斗を投入。終了間際には、高木からのクロスに上田が反応するも、これはオフサイド。そのまま2-1で全韓國大學選抜が逆転勝利を収めた。
2年前のアウェー日韓戦では、スタメン出場をはたしながら退場となった主将の旗手。その借りを返す先制点を決めたことは「よかった」としながらも、2年前同様、セットプレーからの2ゴールで逆転されたことで「前回以上に悔しい」とのコメントを残した。松本監督も「悔しさしかない」ときっぱり。「セットプレー2発での敗戦。わかってはいたのだが……」。
2015年、2017年、そして今大会とアウェー未勝利でも先制点は獲得している全日本。それだけに「前半はシュートチャンスもあった。あそこで決められないと」という追加点の課題が浮き彫りになった形だ。3度目となった“1-2逆転負け”を反省に、次につなげたい。
一方、このチームは7月に行われる、サッカー競技としては最後となるユニバーシアード競技大会(2019/ナポリ)に向けての強化途上。今大会も含め、2週間にわたるアメリカキャンプでの評価という一面もある。松本監督は「本村や(16番・明本考浩、河原の)ダブルボランチのふたりなど、『デンソーカップチャレンジサッカー堺大会』で活躍した選手をチームに加えられたことは大きな収穫。合宿でもいい動きをしていて、選手層に厚みが出た」とコメント。またこの試合でも「森下や紺野、旗手のいいコンビネーションができていた」との手応えを口にした。しかし「後半や延長戦のような展開の中で、アタッカーがどういうふうに仕掛けて点を取るのか、もう少し見定めが必要」と、ユニバーシアード競技大会に向けて、さらなる選考を進める考えだ。
「チャージの基準が曖昧で、あれだけファウルをとられるとなかなかリズムは作れない」(松本監督)というアウェーならではのジャッジに苦しめられたこの試合。だが主将の旗手は「ユニバーシアードでも同じような展開あるかもしれない。その中でも勝てるような組織力や個の力を上げていきたい」と意気込んだ。