『2019年度 第43回 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント』もついにラストマッチ。9月7日(土)にヤンマーフィールドにて決勝戦が行われ、連覇を狙う昨年度王者の明治大学と、2年ぶり5度目の優勝を目指す法政大学が激突した。
「最初の20分は全力で攻撃のギアを上げるプランでいたが、決勝という大舞台で少し緊張していたのかもしれない」。試合後、栗田大輔監督がそう振り返ったように、序盤は明大がボールを保持しながらも攻めあぐねる展開となった。明大の特徴的な左右両ウイング、2番・中村帆高と8番・森下龍矢は「完全に研究されていた」(2番・森下)という状況。とはいえ、法大が優位に試合を進めていたわけではなく、ボランチの6番・大西遼太郎は「前半は相手のトップ下(7番・中村健人)が気になって、前に顔を出すことができなかった」と吐露。互いをよく知る関東勢同士の対戦は、それぞれに特徴を徹底して封じる、タイトな試合展開となった。
均衡が破られたのは23分。押され気味だった法大はコーナーキックを獲得すると、7番・末木裕也の左からのキックを、ファーサイドにいた6番・大西が頭で合わせて法大が先制点を挙げる。先手を取られた明大だったが、ここから“王者”がその実力を見せつけた。失点からわずか4分後の27分、7番・中村とのパス交換で2番・中村が右サイドを抜け出すと、そのままペナルティエリア内に侵入し、ゴール前にマイナスのパス。20番・佐藤凌我がDFをひきつけると、ゴール前に飛び込んできたのが11番・佐藤。フリーの佐藤がそのまま右足を振り抜き、明大があっという間に同点に追いついた。
その後は、中盤での激しいボールの奪い合いとなり一進一退の展開に。30分過ぎからは法大もボールを奪ってからの素早い展開でチャンスを作るなど、どちらに得点が転んでもおかしくない状況となったが、追加点は生まれず1-1のまま試合を折り返した。
後半に入ると、明大は前半以上に厳しいプレスで法大を追い込む。法大も55分、7番・末木のフリーキックがバーを叩いて直下に落ちるチャンスがあったものの、これは明大のGK、21番・加藤大智がキャッチ。59分には明大が7番・中村とのコンビネーションで20番・佐藤がゴール前に抜け出すが、こちらも法大GK、12番・中野小次郎がしっかり収める。ともにチャンスを決めきれないでいる中、先に動いたのは法大だった。60分、28番・田中和樹に代えて“切り札”の8番・紺野和也をピッチに送り出す。明大・栗田監督は「法大は8番の紺野くん、うちは10番の小柏剛」といった突破力のある選手を、どのタイミングで投入するかがひとつの鍵になると語ったが、その言葉どおり登場した途端に得意のドリブルで攻撃の起点となり、コーナーキックを獲得するなどの活躍を見せる。法大はさらに65分、前線でボールを収められる19番・平山駿を投入して前線の活性化をはかる。
しかし法大も、ボランチから左右ワイドのスペースを利用してチャンスをうかがうと、69分には7番・中村のロングボールに11番・佐藤が反応。ボールは法大DFにクリアーされるものの、明大はコーナーキックを獲得。右コーナーのキッカーは7番・中村。「中村とはホットラインがある。いつも練習していた通りのところに走り込んだ」という22番・小野寺健也が、頭で7番・中村のキックを叩きつけてゴール。「前半のプレーがひどくて、ハーフタイムには活を入れた」(明大・栗田監督)という22番・小野寺に、今大会初得点となるゴールで明大が逆転に成功する。
リードを奪った明大は、10番・小柏をはじめとする交代選手を次々と投入してチーム全体のリフレッシュ。1点を追う法大の猛攻を組織的な守備で防ぎきって試合終了。シュート数はどちらも6本と、決して決定機の多い試合ではなかったものの、タイトで激しい中盤の攻防戦や、相手の特徴を徹底してケアした明大が、3年前の雪辱を果たし悲願の連覇を達成した。
率直にうれしいです。今回は5年連続の決勝進出となりましたが、この5年間で一番勝ちたかった試合です。明大は関東の前期リーグをいい形で終えることができ、また(地域予選でも優勝し)関東1位で大阪に乗り込みました。ただ、法政大学さんも本当に素晴らしいチームで、天皇杯ではガンバ大阪さんに勝ってラウンド16に勝ち残っています。我々は天皇杯で川崎フロンターレさんに敗れたということも、この大会でなんとしても勝ち、明治の素晴らしさ、強さを結果で表したいと思いました。そして我々が取り組んでいることの正しさを証明し、選手たちに自信を与えたかった。そういう意味で、とにかく今回は優勝にこだわりました。
立ち上がりは、決勝戦という大舞台に思った以上に選手たちが固くなっていたようです。いつもより切り替えが遅かったし、相手の9番(松澤彰選手)に引っ張られているな、と感じました。相手のひとつめのセットプレーにも合わせられていたので、正直「まずいな」と思っていいたところの失点。けれど、すぐそのあとに11番・佐藤亮が点をとってくれたので、気持ち的には楽になりました。
法大はシンプルに背後へと動き出す勢いがあったので、そこを警戒しながらセカンドボールを奪取しようと伝えました。そのためにも、コンパクトな状態にして相手のスペースを消そうと。相手にボールを蹴らしてしまうと、前線に打点の高い選手がいるので、そこからやられてしまう。また法大には同じサイドからボールを奪おうという狙いが感じられたので、バイタルエリアの空いているところにポジションをとろうとも伝えました。1点目は、その指示どおり、練習どおりの得点で狙いどおりのプランです。
本大会で優勝はしましたが、まだこれから後期リーグ戦もあります。どのチームも明大を研究してくると思いますし、簡単には勝てないでしょう。けれど冬のインカレではチームがいちばんよい状態で、また選手はいちばん成長した状態で最後の試合を迎えたい。それが今年の明治大学の目標です。
自分はあまり緊張しなかったのですが、決勝戦ということもあり、周りは少し切り替えが遅かった部分もありました。決勝戦独特の固さというのはあったと思います。それでも試合が進むにつれて自分たちのリズムになったのですが、失点をしてしまって。周りの顔を見たら沈んでいるというか、このままだと相手の流れに引き寄せられてしまうと感じました。それで、これはもう自分が結果を出すしかない、と強く思いました。本当に決められてよかったし、後半は22番・小野寺選手があの場面で決めてくれたことに感謝しています。
相手とのマッチアップや駆け引きの中で「これはいける」とは思っていたのですが、ゴールできたのはチームメイトのおかげです。あそこで2番・中村がマイナスのパスをくれて、20番・佐藤が中でつぶれてくれた。自分をお膳立てするような形をつくってくれたので、自分にはもう決める自信しかありませんでした。
これまで3年間、辛かった思い出のあった総理大臣杯ですが、優勝をした瞬間にその悔しさもすべて払拭されました。法大さんは、自分たちがなし遂げたかった、J1のクラブを倒すということをしています。本当にうらやましかったし、それだけに自分たちが直接対決するときは負けてはいけない相手だと思っていました。そういうこともあって、勝ててうれしかったです。
自分自身はあまり緊張するタイプではないと思っていたのですが、決勝戦という舞台で見えない緊張があったのかもしれません。前半は法大のトップ下の選手をうまくつかまえきれず、ハーフタイムには栗田監督に「いつものお前のプレーじゃない。もっとできるはずだ」と強く言われて。栗田さんに活を入れてもらったことで、目が覚めたというか、気持ちを切り替えることができました。栗田さんの一言は大きかったです。
ゴールシーンについては、7番・中村選手とはいつもセットプレーを練習している相手なので。ホットラインじゃないですけど(笑)、7番・中村を信じて、いつもどおりの場所に走り込みました。みんなも、監督も喜んでくれて本当によかったです。
個人としてはもちろん、チームとしても悔しさの残った試合です。疲労がある中で出し切ったとは思いますが、ゲームの内容としてみたときには誰ひとりとして満足していないと思う。もちろん、そんな中でも勝ちきれるっていうのが今年の明大の強さなので、そこはポジティブにとらえたいと思います。ただ、1週間後には後期リーグ戦も始まるので、喜ぶのは今日だけにして1週間で次につながる修正しなければ、と思います。
右サイドの自分と左サイドの森下龍矢選手が研究されていることは予想していましたが、どちらも仕掛けられていない状況の中で失点してしまった。これはどこかで思い切りのいいプレーが必要だと思いました。ゴールにつながったプレーは、そうした状況からの一瞬の判断です。練習から挑戦していたことでもあったので、それが結果につながったことは収穫だったと思います。
ゲームプランとしては前半は0-0でもいいと思っていたので、1-1で折り返したのは悪くなかったと思います。ただ、後半にどちらが先に点を決めるかという状況の中で、明治大学との差が出てしまいました。走ることひとつとってみても、相手のほうがやるべきことを徹底していました。その差が出たと思います。勝つイメージはありましたが、結果的にはひっくり返せなかった。今の法政大学には、その力がなかったのだと思います。